そんな観月達をよそに、追っ手のパトカーは走行の勢いを殺さぬまま空中で変形する。
そして、キュルキュルと電子音を発しながら身構える黄色いロボットに、勢い良く飛び掛かった。
黄色いロボットはその勢いを上手く受け流せず、バランスを崩して轟音と共に地に倒れ込む。
間一髪でサムとミカエラを伏せさせた観月は、しかしすぐに地に伏した状態から上体だけを起き上がらせた。
そして、ギャリギャリと耳障りな音を立てる武器を取り出した黒いロボットの赤い隻眼を睨み付ける。
そんな観月と黒いロボットの間で恐怖故に後退りをしていたサムとミカエラは、しかし、黒いロボットの胸部から飛び出た銀色の小柄なロボットを見ると、それぞれ観月の片腕を掴み上げて一気に走り出した。
"火事場の馬鹿力"とはよく言ったもので、黒いロボットを睨み付けていた観月を二人はいとも簡単に引き摺っていく。
当然、黒いロボットを睨んでいた観月は二人に引き摺られる形でロボット達から離れた。
「は、ちょっ、サム!?彼女サン!?」
俺足引き摺ってンだけど!?と驚愕から瞳を大きく見開いて的外れな事を口走る観月に、二人は何を言っているんだとばかりに口を開く。
「ミツキも今の見たでしょ!?あのデカイのと小さいの!!!アレは逃げなきゃヤバいって!!」
「サムの言う通りよ!!だからちゃんと自分で走ってちょうだい!!!」
あとあたしの名前はミカエラよ!!等とどことなく緊張感を削がれるやり取りが行われているが、現状は危機的状況だ。
何せ今現在、三人は銀色の小柄なロボットに追われ、その後ろでは黄色いロボットと黒いロボットが凄絶な殴り合いのバトルを繰り広げている。
サムとミカエラの後方――観月にとっての前方から向かって来る、銀色の小柄なロボットをその視界に捉えた観月は、ミカエラの要望に応える為に勢い良く体を反転させた。
「うわっ!!ミツキ!?」
「いきなり何なの!?」
「おいおい、そりゃねェってお二方…自分で走れっつったのはそっちじゃねェか」
俺なぁんにも悪くねェよなァ?と後ろに振り向いて、自分達を追う銀色の小柄なロボットに尋ねる観月に、サムとミカエラは揃って頭痛を覚えた。
――それがいけなかったのかもしれない。
「うわぁっ!?」
「「サム!?」」
銀色の小柄なロボットの四肢が逃げるサムの足に絡み付き、サムのバランスを崩す。
バランスを崩されたサムは、前方に大きく転倒した。
サムが転倒したと同時に、ミカエラは近くの倉庫に向かって駆け、観月は少し離れた場所にある廃材置場に走り去る。
サムはなんとか自力で外そうと試みるものの、銀色の小柄なロボットはサムのジーンズの裾を掴んで放そうとはせず、仕舞いにはサム自身が自分のジーンズの裾に引っ付き虫の如く引っ付くロボットをジーンズごと蹴り飛ばした。
しかしそんな抵抗を物ともせず、ロボットはサムを土手下のフェンスに追い詰めると、地を蹴って襲いかかる。
「うわぁぁぁ!!!!!」
――もう駄目だ、
悲鳴を上げながらサムが心の中でそう思ったその時、
「――サム、頭下げてろ」
「!」
ロボットの背後に、人影が表れた。
ガキィン!
サムの頭上で金属のぶつかり合う音と共に火花が散り、銀色の小柄なロボットが弾き飛ばされる。
サムが言われた通りに下げていた頭を上げると、そこにはロボットを弾き飛ばしたであろう鉄パイプを携えた観月が立っていた。
しかし流石に硬いモノを殴った反動で痺れたのか、頻りに手首をぶらぶらと揺らしている。
「ミツキ…」
「よぉサム。随分と酷ェ格好だな」
せっかくのデートが台無しになるぜ?と肩を竦めながら不敵に笑う観月に、サムはこれ以上ない程の安堵の息を吐き出した。
しかし、それも束の間。
《眼鏡…ウィトウィッキーノ眼鏡…!!》
「ひぃっ!?」
弾き飛ばされた衝撃から回復したのか、銀色のロボットが再びサムに襲いかかる。
観月が再度弾き飛ばそうと鉄パイプを大きく振り上げたが、逆にロボットにそれを弾き飛ばされてしまった。
観月の顔が驚愕に染まり、サムが今度こそダメだと諦めかけたその時。
「サム達から離れなさい!!このバケモノ!!!!」
観月とサムの目の前に割り込むように現れたミカエラが、その手に持ったチェーンソーで見る間にロボットを細切れにしていく。
無残にも頭と胴体が泣き別れた銀色のロボットは、しかし逃げようとしていたその頭を近付いてきたサムにサッカーのボール宜しく蹴り飛ばされてしまった。
悲鳴を上げながら飛んで行ったソレを見送って、観月達はいつの間にか静かになっていた周りを見渡す。
そしてサムの誘導の元、来た道を戻って行った。
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