生理痛2

 基がいつも優しいからって、少しわがままを言いすぎたかもしれない。静まった部屋に、基になんと言葉をかけてこの空気を壊していいか分からなくなる。

 次第に響いてくる痛みに、また脂汗が吹き出してきそうだ。

 さらり、と。基の指先がわたしの後頭部を撫でた。いや、撫でたと言うよりは触れたと言った方が合っている気がする。

「ごめん。無理言ったりして。具合悪いって言ってたけど動けそうだと思って……。痛みに気づいてあげられなくて、本当にごめん」

「違う」

 寝返りを打って振り向くと、基は心配そうな顔をしていた。

 あーっ、もうなんだよー。

「今のは全部わたしが悪いじゃん。どうして基が謝るの? 当たるなって、怒っていいのに」

「でも、俺だって無理強いしようとしただろ」

「基はわたしを心配してくれたんじゃん。なのにわたし怒鳴ったりして……その、ごめんなさい」

「いいよ。お腹が空いたら蕎麦茹でるから、いつでも言って」

「うん。ありがとう。……あ」

 しまった。

 完璧に目が覚めてしまったからだろうか、また下腹部の鈍い痛みが大きくなってきた。

「どうしたの? また痛くなってきた?」

「うん……。基の言うとおり、一回ご飯食べて鎮痛剤飲んでおけばよかったぁ」

 痛みか、後悔か、基の優しさからか。分からないけど涙が出た。

「今飲む?」

「痛くなってからじゃ効かないんだよぉ」

「じゃあ、ジョニーが眠れるように俺、ずっとここにいるから」

 そう言って握ってくれたわたしの手は汗ばんでいて、申し訳ないと思った。それでも基は深く手を繋いで、わたしを安心させてくれようとしていた。

 もっと、しっかりしなくちゃな。わたし最近、基に甘えたり心配かけたりしてばっかりいる。

「出産したら生理痛を感じなくなったって話もよく聞くから、それまでの辛抱だね」

「うん」

「……ジョニー。俺と結婚しよう」

「は?」

 こんなときに、一体どんなリアクションをすればいいんだろう。今、わたし生理痛で寝込んでなかったっけ。

 何にせよ、唐突すぎやしないか。

「えっと……一応プロポーズなんだけど……」

「くくっ、あははっ!」

 お腹は痛いのに、なんでか笑ってしまう。

「そんな笑わないでよ」

「ごめんごめん」

「で、俺と結婚してくれますか?」

「こんなわたしでよければ」

 痛みを堪えながら抱き締め合うと、どちらからともなく笑みがこぼれた。

 あぁ、幸せってこいうことなんだろう。こうやって家族ができていくんだ。

 こんな堪え難い痛みでも、あなたの子供を産めるのならば頑張ってみよう。

 そう思った。




ょうがない。
今の痛みも未来の幸せの為……。


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