「走ったら腹減ったな」
「そうだねー。食べに行こうか」
「ええのー。あ、あの女はええんか」
「いいでしょ。これは取り返してきたし」
「……案外えげつないのう、星野。女に優しいイメージしかなかったけど」
「いやぁ、そんなことないでしょ。だって俺、ジョニー以外にいらないから」
「それを聞いて安心した」
ワシは明日も朝から取材で、星野も救命士の学校だというのに朝までファミレスで語り明かした。
今までしなかったような恋愛の深い話とか性癖の話をしたり、ヒヨコのときと同じように仕事の愚痴も言い合った。
今までさらせなかった部分をさらしながら、少し照れたり笑ったり。
ワシの知らなかったジョニーの話を聞いてムキになったり、逆に中学や高校んときのアイツの話をしたりもして、今さら、と思うかもしれんが思った。
星野とはきっと、この先移動やなんかで遠く離れたとしても、連絡を取り合うんじゃろうな。ジョニーと同じように、大事な友達として。
星野への誤解も解けたワシじゃったが、ジョニーへは連絡せずにおこう。
なんだかんだ口出しをしたが、やっぱりこれは二人の問題で、もうワシが口や手を出さなくとも解決するじゃろう。
それに、悔しかったから。自分では駄目なんだと痛感したから、せめてものワシの慰めに、本人同士で解決した最高のハッピーエンドを拝ませてもらおうじゃないか。ジブリのように。
「なぁ、星野。またいつかアイツが泣いてばっかいたら、そんときはもう、アイツが戻ってくるとは思うなよ」
「大丈夫だよ。もう泣かせたりなんかしない。それにジョニーは俺のこと好きだから、絶対に戻ってくるよ」
「……言うねぇ」
「それに大羽君は優しいから、ジョニーを泣かせるようなことはできないって分かるよ」
おそらく、きっと。星野は分かっとるんじゃろう。ワシがジョニーのことをどう思っとったか。
それでもこの余裕を見せ付けられたら、ワシの想いなんか遠く及ばんのだろう。
「……ほんま、敵わんのぉ」
今日が待機なんかではなく、休みだったらよかったのに。そしたら酒で想いさえも飲み干してやれたのに。
そんなことを思いながら、氷が解けて薄くなったコーラを飲み干した。