10-ベンチ2

 アタシが何度も繰り返す「どうして」も「なんで」も大羽に答えることはできないけど、吐き出さないよりはマシだと気付かされた。

 口にすればするほど、溜まっていた悲しみが言葉になって出てくる。

「基くんに聞いたの。元カノのこと、大好きだったか。そしたら、うんって。まだ好きなんだって思っちゃった」

「……」

「本当は悔しかったし悲しかった! 今基くんと付き合ってるのはアタシなのに、一番なんかじゃないんだって、思って……」

「お前はそういうとこ、昔から変わらんのう。気にしなくてええことばっか気にして、悩んで。お前が一番に決まっとるじゃろーが」

「分かんないじゃん! じゃなかったら何で未だに姫ちゃんて名前で入ってるの?」

「たまたまじゃろう。他の友達かもしれん。気にすんな」

「気になるの」

「気にしすぎてハゲるぞ」

「ハゲるか」

「泣くな」

「泣かない」

「嘘つけ」

 今泣けば、きっと泣き続けてしまう。本当は泣きたくなんかないのに。また目を腫らしたくなんかないはずなのに。

「うわあああぁぁッ、うあぁぁぁーん!」

「泣け泣け」

 本気で悲しくなった。こんなに好きなのに、どうしてこんなに不安なの? アタシの努力が足りないの? 頭がグルグルする。

 まるで子供のようだと、大羽は言った。昔から変わっていないと。

 そんなことないって。こんな泣き虫じゃなかったって言ったら、そうでもなかったと笑われた。

 アタシが何度愚痴っても、心の奥底にある汚い感情を吐き出しても、大羽は逃げずに聞いてくれた。

 今までどこか、自分の恋愛の話をしないようにしていたし、実際にしたことはなかった。

 それは大羽が楽しい時間を共有できる友達で、それさえあれば良かったし、男だからアタシの気持ちを理解できないだろうとも思っていた。

 そして男勝りな自分が、結局は周りの女の子と同じだと思われたくなかったのだ。

 だけど今、自分は変わりこうして全部を吐き出している。そして前よりも少し、もっと友達になれたような気がする。

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