お互いの嬉しいこととか嫌がることとか気持ちいいことも一個ずつ知って、その中でもお互い素直にいれるから居やすくて。
進次と出会って暮らして、そういうことが大事なんだと分かった。
「進次と出会って良かったと思うよ、ほんと」
「なんや、幸せやな。俺ら」
「うん」
イヤホンから、ふと大好きな歌が流れる。
この歌は、元々わたしが好きで聞いていたのを進次も好きになってくれた歌。
サビになると進次がコーラスを口ずさみ、わたしがメロディーを小さく歌う。
「Fu〜u〜、Fu〜u〜」
「今星に、向かってぇ…」
「Fu〜u〜、Fu〜u〜」
「君を乗せ航海に出よーお」
静かに、真夜中の空気に響きすぎないように溶け込ませて、キラキラするこの幸せになれる歌を。
柄にもなく、二人で歌ったりするのだ。
「あー、なんやテンション上がってきたッ!」
「えっ」
二番に入ると突然抱き上げられた。
「わっ!」
大声で歌いながら、軽やかに走る。
わたしを抱えたままリズムに乗って、飛んだり、跳ねたり、回ったりして楽しそうに。
イヤホンが取れてしまわないように頬を寄せて、わたしは笑い声を上げた。
「あははははっ、ハードロマンチック!」
「やろぉ? 俺案外ロマンチックなんやで!」
「知ってるー、あはははっ!」
近所迷惑かえりみないで高校生の時みたいにはしゃいでしまう。
くだらないことでこんなにも嬉しくて楽しくなるのは、進次のせいだ。
家が近付いてきて、進次はわたしをそっと下ろす。
「はー、おもしろかったぁ。あはははっ! 荷物もあるのに進次力持ちー」
「当たり前やろ」
そしてまた手を繋いだ。
何でもない平日の、特別な前日。何でもないような時間の、ロマンチック。
人に見られたら笑われてしまいそうな瞬間も、進次と二人なら最高に楽しい瞬間になるの。
永遠なんか信じてないけど、ずっとこのまま二人で変わらない関係ならいいのに、と思う。
だから少しずつ愛を。
頬をくっつける喜びを。
温もりの安心を。
お互いに出会えたことに感謝しながら、そっと大切にしていくんだ。
「あ、明日休み?」
「仕事」
「そっかー、残念」
「なんで?」
「べつにー。一緒にぐうたらできたらなぁと思って。じゃあ、明日の晩ご飯は進次の好きなものを作っててあげようかな」
「ほんま? じゃあカレー」
「カレー好きだっけ」
「なんとなく明日はカレー食いたいねん」
「いや、今どっかからカレーの匂いしたからじゃない?」
「あ、やっぱした? 気のせいだと思っとったわ」
なんて会話をしながら次の日夕方には、夜更かししすぎたせいで夕飯も作らずに進次が帰ってくるまで寝てたとか、ごめん。
愛してるから許してね?
言葉じゃない愛情は
この胸で受け止めてるから