もしもトッキューが新撰組だったら3

永倉「おい藤堂、口を慎めよ? 見ず知らずの人間に、ベラベラと隊内のことを話すな」

┏  二番隊組長  ┓
┗永倉新八(大羽廣隆)┛

 立ち止まって話していた部屋の襖が突然開き、現れたのはまた独特の訛りを持った男の人だった。

藤堂「な、永倉さん! すみません!」

永倉「ワシはお前がそうやって、いつ隊の機密を漏らすかヒヤヒヤしとるんじゃ。少しは気ぃ使って物事話せよ」

藤堂「気を付けます……」

原田「永倉は真面目だよなぁ」

┏   十番隊組長   ┓
┗原田左之助(大口誠治郎)┛

 永倉さんの横からさらに襖を開け、こちらを覗き込むような形で顔を出した彼は、ニコニコと大きな目と口を開いた。

藤堂「原田さんまでいたんすか……」

 藤堂さんが「やってまった」と前髪を掻き上げ落ち込んでいると、原田さんが永倉さんを押し退けて目の前にやってきた。

 人懐っこい笑顔にホッとしていたけど、急に距離を詰められて心拍数が上がる。

原田「珍しく女の声がすると思ったら、可愛い子じゃん! どうしたの、この子」

藤堂「白牡丹の娘さんだそうです。わざわざ一人で品を届けに来てくれたんです」

原田「そっか、ありがとうな」

ジョニー「っ!」

 くしゃくしゃと頭を撫でられ、心臓は大きく音を立てた。ギュッと目をつむり、恥ずかしさに俯く。

原田「真っ赤になっちゃって、うぶだなぁ」

永倉「左之さん、ええかげんにしとってください。その子、困っとるでしょう。ホンマに毎度毎度、可愛い娘を見たらそうやって……」

 「アンタがちょっかいばかりかけるけぇ娘達は皆本気にするんです」と、永倉さんが原田さんに小言のように早口でまくし立てる。原田さんの耳には入っていないようで、小指で耳を掻いていた。

 新撰組ではいつもの光景なのか、藤堂さんは「行きましょう」と私の歩を促した。

ジョニー「ふふっ」

藤堂「何か?」

ジョニー「いえ、何でもないんです」

 やっぱり、思ったより悪い人達ではないようだ。噂はきっと、本当にただの噂なんだ。そう思ったとき。

井上「また土方君の拷問で薩摩の間者が死んじまったよ」

 道場から恐ろしい言葉が聞こえた。ご、拷問? 死んだ?

島田「本当に容赦ないっすね。さすが鬼の副長。間者は口を割ったんですか? あ、握り飯食います?」

井上「ああ、頂こうか。……死ぬ間際に死にたくないと洗いざらい喋ったらしい。結局、半刻も持たずに逝っちまったけどな」

藤堂「あのー、井上さん、島田さん。お客さんが来てるんでそういう話は、もうちょっと小さな声で……」

 藤堂さんが声をかけると二人はハッとしたように振り返り、私に笑顔を繕った。手にはおにぎり。

井上「これはこれは、すまないね。随分可愛いお客さんだ。誰の客だい?」

┏  八番隊組長  ┓
┗井上源三郎(佐藤環)┛

藤堂「白牡丹の娘さんですよ。頼んでいた物が仕上がったそうで」

井上「おお、そうだったか」

 会釈をすると人の良さそうな微笑みで迎えてくれた。だけど、私は井上さんのさっきの言葉が気になっていた。

 「土方」という名前は聞いたことがある。「鬼の副長」と呼ばれ、新撰組の中でも恐れられているとか。

 噂は本当だったんだ。拷問だなんて、それで人を殺しちゃうだなんて、本当に恐ろしい。恐怖で変な汗が出てくる。

藤堂「局長、いませんか? 斎藤さんが沖田さんと一緒にいるだろうって言ってたんですけど」

 道場をぐるっと見渡すと、井上さんと、話していた体の大きな人以外には奥で素振りを繰り返している人だけで、とても静かだ。

島田「近藤さんなら今し方、副長の部屋に行ったぜ。また間者のことだろうな」

┏諸士取調役/二番隊伍長┓
┗ 島田魁(佐藤貴光)  ┛

 体の大きな人が言う。声も大きいのか、それは道場に響いた。

 口元にお米粒を付け、手に持っていたおにぎりを平らげると親指をペロッと舐めた。

藤堂「参ったなぁ。確か局長や土方さんのもあるから、品を確認してもらいたかったんですけど……」

 「よいしょ」と藤堂さんが風呂敷を道場の入り口へ下ろす時、中から細長い箱がこぼれ落ちた。慌てて拾う藤堂さんから、それを受け取る。

藤堂「ご、ごめん!」

ジョニー「いえ……」

 内心ドキドキしながら箱を開けると、中身はどうやら無事なようだ。これも頼まれた品の一つだったのでホッとする。

ジョニー「大丈夫です」

藤堂「よかったぁ」

井上「ん? そりゃあ簪だろう。それも注文の品なのか?」

 井上さんがおにぎりを平らげた後、もう一方の手で顎髭に指を滑らせながら私の手の中を覗いた。私は安堵して一度閉じかけた箱をもう一度開き、三人の目の前に差し出す。

ジョニー「そうです。綺麗なべっ甲の簪を一本、と承ったので、父が信頼のある商いから買い付けてきました」

 それはそれは綺麗なべっ甲色の、艶やかで、でも華やかな装飾の簪。少し派手だが、本当は私が欲しいくらいだ。

 でも、井上さんが疑うのも頷ける。だって、新撰組には男ばかりだと聞いていた。簪の注文だなんて、何かの間違いなんじゃないだろうか。

井上「一体誰が頼んだんだ?」

藤堂「原田さんじゃないですか? ほら、あの人よく吉原に行ってるじゃないですか。そこの遊女さんに贈り物とか」

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