夕飯ができるまでソファの上でジェラートとテレビをみてた。
「あたしこのアニメ好きなんすよ」
「アニメってお前、ニナ本当にガキだなぁ」
「いいじゃないすか!一緒に見ましょ!」
膝の上にジェラートを乗っけて滑稽なソレに二人で笑った。あぁやっぱりペンギン隊長面白いな!なんだかリーダーに似てるんすよ!
くるくるよく動くソレをジェラートはやっぱりくるくるよく動く目で追いながらおとなしくしててくれたから、ソルベとリーダーは難しいお話に専念してた。

何かを炒める音がし始めて、油の匂いとかの美味しそうな香りが漂ってきたからジェラートを抱っこして腰をあげた。
「ジェラさんお腹空きません?」
「減った!」
素直に答えたジェラートを抱えてメローネのいるキッチンに抜き足差し足忍び足で向かってみた。

「ポテトあるよジェラさん!」
「ニナ、取れ!」

揚げたてっぽいソレを見つけて、コンロに向かうメローネの背からジェラさんに1本とってあげる。小さな手でソレを掴んで、小さくかじりはじめた。

「てかさぁ、普通にわかってるからな?」
振り返ったメローネが言ったときには
「あつ!」
「あっつい!メローネのバカ!」
ハフハフと口の中の湯気を逃がしながら二人でメローネに悪態をついてみた。あっつ!マジであっつい!
「バカってお前らの事じゃね?」
怒られる前にキッチンから避難してジェラートを見たら、まだポテト1本を食べきってなかったけどヒヒヒと笑ってた。


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クッションを高く積んだ椅子の上にいたジェラートはご飯食べてる途中から眠くなってきていたらしく、メローネが作った野菜ばっかりのスープを半分ばかり残して(でもジェラート用のポテトには色んな味のディップがあってジェラートはソレを全部ためしてた!)、ソルベに抱えられるようにして寝室に向かった。

「お休みジェラさん」

手を振ったらジェラさんはクタッとしたままそれでも手を振ってくれた。ああ添い寝したい!

ジェラさんが残したポテトを摘みながらダイニングテーブルはまだ騒がしい夕飯が終わらずにいる。
プロシュートにペッシは情報収集に行ったまま戻ってきてないから、かわいそうだなぁと思った。あんなかわいいジェラートを見れないなんて人生にある幸運の何%か確実に損してるよ。あ、このチーズソースおいしい。

「しかし今日のニナ、さすがだったな」
メローネがグラスにワインを注ぎながら言った。
「へ!?」
一瞬わからなくてポテトを吐き出しそうになった。でもリーダーも「確かに」、そう言ってから頷いた「子供の宥め方など、オレたちじゃあわからない」。

「あ、あぁ」

なんだ。そんな事すか。照れるじゃないですか。
「何があったんだよ」
ギアッチョが聞いて、メローネがざっくりと説明した。
「あたしは、別になんも」
してないですよ。本当に。そう言いたかったけれどギアッチョのヒュウという口笛がさらってしまった。

「あのままジェラートが破壊してたら今頃窓という窓にガラスはなかったろうからなぁ」
「アハ、かもしれないすね」
「大家族には案外日常茶飯事か?」

ホル兄さんが言った。ま、そうですよ。頷いたらワイングラスを一気にあおって「ジェラートじゃなくても、そりゃあパニクるよな」、言った。

「いきなりちっこくなってさぁ、いつ戻るかもわかんねぇんじゃ」
「そーだよなぁ」
「アイツを責めても仕方ねぇし、うーん」
唸ってから隣で相槌打ってたギアッチョに「しばらく育ててみっか」、笑わずに提案した。ホル兄さんも心配なんだなぁ、当たり前に思っていたけれど、なんかすごく新しく感じてしまった。だからじゃないけど、

「なら!あたし得意!」
「得意って」
「大家族だったし!」
「一人も産んでないのに得意と言えるのも珍しいな」

リーダーが笑って言った。アハハハ、そうかもしれないすね。でも、家族は多いほうが楽しいすよ。このチームだって大家族みたいなもんじゃないすか。暗殺なんて汚い最低な仕事やってんのに、みんなしてご飯食べたりしちゃって。言おうと思ったけど、つい笑いだしてしまったあたしはついに言えなかったすよ。


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たらふくポテトを食べて部屋に戻ろうとした時にソルベがしずかに出てきた。あたしをみると「よぅ」とやはり小さく言った。あぁきっとジェラートが寝てるんだね。左手に持ったタバコとライターも、ソルベ優しいじゃーん。

「よく寝てます?」
「電池が切れたみてぇだよ」
ふふふと口を押さえて笑ったら、ソルベも口の端をあげた。
手を上げてソルベと分かれ自室に帰った。ゴロンと横になって今日を思い返した。小さな高い体温に振り回されたけど、悪い気はしない。あぁ、あたしの食事当番になったら星3つなパンケーキをおやつに作ってあげよう。きっと喜んでくれる。
瞼を下ろしていたら思考も微睡みはじめてきた。あぁヤバい眠い。お腹いっぱいだしな。でも今ここでねたら太るな。そりゃあヤバい。危機感を感じて体を起こそうとした時にノックもなくあたしの部屋のドアが動いた。遠慮なく入ってきたのはホル兄さんだった。
兄さん兄さん一応オンナノコの部屋すよ。遠慮はいらないけど、ちっとは気にしてよ。

手土産に炭酸水を持ってきたらしく、ほい、と投げられベッドに腰掛けた。
「ありがとっす」
言ってから栓を捻る。シュワっと炭酸の抜ける音がしてあたしは間をおいてから、全部開けた。

「リゾットと話したんだが」

口をつけながら横をみたらホル兄さんは少し笑ってた。
「ジェラートの事は様子を見るのは当然だが、長期的になったら組織に連絡入れなきゃヤベェだろって事になった」
「はぁ」
「ま、2週間くらいたってからだが、それまでに戻りゃあオフレコだ」
「そっすね」
「ここのヤツは面倒がったってジェラートを追い出そうってヤツは居ねぇだろ?さっきの話じゃねぇが、育ててくかって」
「天下の暗殺チームって案外優しいんすねぇ」
ふふふと笑ったら
「優しい連中だから暗殺なんてしてんじゃね?」
逆説的に言われてしまった。
「ま、あたし的には異存はないっすけど!」
むしろ喜んで協力させていただきますとも!ホル兄さんの顔を見ながら言ったら、頭をその大きな手で撫でてくれた。

「頼りにしてんぜ?」
「おまかせくださいな!」

単純に嬉しかった。ジェラートには悪いけどホル兄さんにこんな事言われるなんて今までなかったし、きっとこれからもないだろう。たとえ仕事じゃなくても、報酬が出なくてもあたしがんばるよ!

だけど、そう、本当に、だけど。
翌日の朝にはジェラートさんは元のサイズに戻ってしまったのですよ。

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