「さくま、じろう…かあ」

ベッドに仰向けに寝転がり、携帯の画面に表示される名前を何とはなしに呟いてみる。あのあと、サッカーの話題で意気投合した俺たちは、携帯の番号まで交換してしまった。自分の迂闊ぶりに溜息を吐く。短い時間の中でも佐久間は良い奴だと十分に思えたし、友達が増えたことは素直に嬉しい。けれど、佐久間は当然俺を女の子だと思っている。幾ら言動や顔立ちに女の子らしさが無かろうと、堂々とスカートを着て出歩いている奴を男子だとは普通思わない。つまり、佐久間と会うときには常に女の子の格好をしなければならないのだ。正直失敗したと思う。スカートではサッカーも出来ない上、今日の様に男の面子とやらを考えなければならないのも面倒だ。

「男の格好してる時に出会えたら良かったのに。…無理だけど」

そう、女装していなければ、俺と佐久間は仲良くなるどころか出会うことすら難しかっただろう。万が一にも知り合いに女装姿で会わないため、あの格好をする時はいつも足を伸ばして帝国の学区まで行くのだ。それ以外で寄り付くようなことも無い。皮肉な話もあったものだと嘆息して、静かに光る携帯電話を眺めた。

「……」

メール画面を開く。何を書くべきか悩んで、打っては消してを繰り返した。難しいことなんか有りやしないのに。いつもと同じ様に、これから宜しくと送れば良いだけだ。それだけでは何だか寂しいと思うのは、女の子としてメールしなければと思うせいだろうか。そのあと優に30分は悩んだものの、結局いつもと同じ味も素っ気もない文章しか出てこなかった。女の子とは思えない。いや、女の子じゃないけど。…佐久間は、どんなメールを打つのかな。返事が来るのが待ち遠しくて、知らず知らず頬が緩んだ。



05.











相変わらずの鈍足進行ですね。あと読みにくくて申し訳ないです…。



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