「俺、円堂守。雷門中2年!」
「…」
「?」
「…同い年だとは思わなかった」
「え、そうなのか」

自動販売機でジュースを買ってから、公園の中のベンチを陣取っての自己紹介。起こしたプルタブを指で弄んでいる美人はどうやら俺と同い年らしい。垢抜けた…というか、大人びた表情や物言いをするものだから、てっきり年上かと思ったのだけれど。

「佐久間次郎だ。よろしく」

美人、いや、佐久間が小さく笑って右手を差し出す。一瞬躊躇ったけれど、よろしくと握り返して直ぐに離した。俺はGKだから、お世辞にも女の子みたいな綺麗な手とは言えない。こんな格好をしておいて今更男だなどと言い出せる筈がなかった。引き攣っているであろう俺の笑顔に不思議そうにする佐久間に冷や汗が伝う。これはヤバいぞ。話を逸らさなければと慌てて話題を模索し、佐久間の着ていた制服が目に留まった。

「そそそーいえばその制服、帝国のだよな!佐久間は帝国の生徒なのか!いやー、帝国の制服って何か格好良いよな!佐久間によく似合ってるぜ!」
「そう…か?」
「うんうん!はは、は…」

どうやら佐久間の気を逸らせた様だ。汗の滲む掌を拭って息を吐く。喉を潤す為に先程買ったスポーツドリンクを一口飲んで、漸く落ち着きを取り戻した。隣では佐久間が同じものを口に運んでいる。顔が良いとそんな普通のことですら様になるなあなどと考えて、ふと思い出した。

「そういえば、帝国ってサッカーがすげー強いので有名だよな!佐久間は何部なんだ?」
「ん…、一応、そのサッカー部だ」
「えっ…佐久間、サッカー部なのか!あの帝国の!?うわぁ、じゃあ滅茶苦茶上手いんだろーなあ…!」

40年間FFで無敗を誇る帝国学園。そのサッカー部に所属しているということは、相応の技術がある筈。ポジションはどこだろう。先程一発の蹴りで男を昏倒させた力を見る限り、FWだろうか。そうならば一度くらいシュートを受けてみたい。思わぬ巡り合わせに胸が弾んで、頬が緩む。無意識のうちに拳を握り込むと、隣から聞こえる微かな笑い声にはっとした。

「…さ、佐久間?」
「ああ、悪い。あんまりあからさまに嬉しそうな顔をするから、ついな。…円堂も、サッカーが好きなのか?」
「っおう!大好きなんだ!へへ、これでもサッカー部のキャプ…」
「キャプ?」
「キャ…、キャプ、キャプテンを支えるマネージャーやってるからさ!」
「へえ、そうなのか」

危ない、普通にキャプテンやってるとか言うところだった…!かなり無理矢理な誤魔化し方だけれど佐久間は特に不審にも思っていないらしい。サッカーに関する話題だからか、今までより柔らかく綺麗な笑みを滲ませている。俺のことなんか言えたもんじゃない。…さっきから思っていたけれど、佐久間はその大人びた印象に反してちょっと鈍感だ。それに感謝しつつ、残りのスポーツドリンクを全て飲み干した。何故だろう、今日は妙に暑い。



04.











自己紹介の話。中学生っぽい青い春を書きたい訳ですが、自分がそんなもんを経験してないので難しいです。



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