先刻彼がゲス呼ばわりしていた男達と同じ誘い文句を放ってから、俺は必死に言い訳していた。

「いや、決して疚しい気持ちは無かっ…たと言えば嘘になるけど、でもそう言うのじゃなくてさ!あー、ほら、お礼!助けて貰ったらお礼はちゃんとしろって母ちゃんがいつも…!」

身ぶり手振りを交えて弁解すれば、目を丸めていた美人、…ああもうこの呼び方面倒だなあ。とにかく、美人は僅かに顔を歪ませて。

「…ぷ…っはは!お、お前、幾らなんでも慌てすぎ…っ!」

からの大爆笑。俺の大真面目な言い訳は彼には滑稽に映ったらしい。それでも先程までの剣呑な空気はもう無く、密かに安堵の息を吐いた。…さて、どうやってお礼をするべきか。思案を巡らせながらふと視界に入った公園の時計が指し示す時刻は、丁度正午。浮かんだ名案に思わず笑みが浮かぶ。

「そうだ、昼飯奢らせてくれよ!」
「お、……」

あれ。名案だと思ったのに美人は渋い顔だ。もしかして、もう済ませてしまったのだろうか。そう聞いてみれば帰ってきたのは否定の返事。

「その…、男が女に昼飯を奢って貰うっていうのは、な」
「…あー…、うーん」

そうか、俺、今女の子の格好してるんだった。それにしたって細かいことを気にしていると思うけれど。それとも世間では女が男に飯を奢るのは変なことなんだろうか。だとしたら、男と女って面倒臭いなあ。

「じゃあ…そうだな、せめて其処の自販。ジュースくらいなら良いだろ?」

すぐ側の自動販売機を指差せば、俺が譲らないと悟ったのか美人も諦めた様に頷く。よし、交渉成立…、なんか違うな。まあ良いか。何れにせよ、俺と美人のベタな縁はどうにかこうにか繋がった様である。



03.











短い…!閑話休題?的な話になってしまいました。次回はやっと自己紹介!



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