※幼馴染パロ、且つ高校生





一年一度のスペシャルデイ、バレンタイン。守の戦果は上々だった。

「おー、大量じゃん」
「へへっ、いーだろ!…っても、全部友チョコだけどさ」
「…ご愁傷様だな…」

隣で首を傾げる幼馴染になんでもないと言いつつ、この鈍感にチョコを渡したであろう奴等に同情した。守の手に下げられた紙袋から見える戦利品は、どれも丁寧にラッピングされている。明らかに友人へ送るチョコとは一線を画しているだろうそれ。しかし気付かないのが俺の幼馴染、円堂守という男だった。持ち前の天然魔性ぶりで老若男女にフラグを立てておきながら回収はしない。寄せられる感情に気付かない。バレンタインという日にチョコを貰おうが、それが男からだろうが女からだろうが、友人として渡されたと信じて疑わない。以前こそ誰からでもチョコを貰う守に妬きもしたが、この調子が何年も続けば渡す方に同情したくもなる。…いや、それは寧ろ、

「じゃ、これは俺から」
「やった!ありがとな晴矢っ」
「心して食いやがれ」
「りょーかーい」

自分がそいつらと同じ道を辿っているからこその親近感に近かった。こうして毎年チョコをやっては、友チョコならぬ幼馴染チョコとして守の胃に収まるのがバレンタインの通例だ。好きだと一言伝えれば変わるのかもしれないが、そう簡単に言えるのなら俺も苦労はしない。…今ヘタレとか思った奴、後でアトミックフレアな!

「晴矢、何怖い顔してんの」
「あ?…な、何でもねえ…」
「ふーん……、…あのさ」
「何だよ」

珍しく口ごもる守を見ると、鞄の中に手を突っ込み何やら探している様だ。待つこと暫し。程なくして俺の眼前に突き出されたのは、小石くらいの大きさの黒い何かだった。守の掌に無造作に乗せられているそれが何なのか解らない。肝心の守はと言えば、睨むと言うのに相応しい眼力で俺を見上げている。どうやら受け取れということらしい。恐る恐るその黒い固形物をつまみ上げると、守が俯きがちに口を開く。

「は、晴矢にはいつも世話になってるから…一応お返し、みたいな…も、勿論深い意味は無いぞ!ほんとに!…俺が作ったチョコだから味は保証できないけど、気持ちは本物だから…あ、本物ってのは感謝の気持ちがな!」

よく見ると、栗色の髪の隙間から除く耳は真っ赤だった。自分の顔に熱が集中するのが解る。守と幼馴染を始めて十数年、こんなバレンタインは初めてだ。漸く俺へのフラグが回収される時が来たのかもしれない。信心の薄さには定評のある俺だが、今だけはその神様とやらに万歳三唱したい気分だ。あのムカつくヒロトに投げキッスだって出来…いややっぱそれは無理。とにかく、そのぐらい嬉しい。恐らく失敗した中でもまだマシ、程度であろう守のチョコは途轍もなく苦かったけれど、今まで俺が味わったものの中で一番甘い味がした。気がする。



愛しさで相殺
( Happy Valentine's Day! )











何というありがち!でも南円はベタであればあるほど美味しいよね!

title by NIL



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -