「佐久間!」

明るい声と共に右肩に置かれた手を、考えるより先に振り払っていた。手を振り払われた円堂は、叩かれた左手を中途半端に上げたまま間抜け面で俺を見ている。俺はといえば、血の気が引くという感覚を初めて体験していた。有り難くも喜ばしくもないことに。

「ぁ…すまない、円堂!大丈夫か?」
「や、うん、大丈夫。俺の方こそごめんな、驚かせたみたいで」
「いや、円堂は悪くない。その…見えない方向から触られるのが、苦手なんだ。…少しだけ」

本当は物凄く。でもそれを言えば円堂は気に病むだろうから、少しと付け加えた。理由に成程と呟いた円堂に、だから俺の右にはあまり立たない方が良いと促す。帝国の連中ほど馴染めば大丈夫だが、慣れない相手だと些か過剰に反応してしまうから。けれど、円堂はじっと俺の顔、いや、正確には眼帯の辺りを見つめて、一つ頷いただけ。動く様子の無い円堂に声をかけようとした時、不意に俺の右手が温かさに包まれた。

「っ、」
「それならさぁ、佐久間」
「え、んどう…?」
「お前の右隣、俺のにして良いか?」

ずっと佐久間の右隣にいたら、他の奴は触れないだろ。そう言って笑う円堂に、心臓が大きく跳ねた。頬が熱い。言葉が出ない。畜生、なんて殺し文句だ。そんなこと、そんな顔で言われたら、拒否なんて出来る訳がないじゃないか。ただでさえ、ずっと隣に居てくれたら、なんて考えてたのに。期待させる様なことばかり言わないでくれ。俺の右隣がお前のものになったって、お前の隣はみんなのものなんだろ。

「その代わり…、にもならないけど、俺の左隣は佐久間が貰ってくれよ」
「は、」

これは夢か。夢だよな、分かってる。でも、夢なら、良いだろ。円堂の左隣を、俺だけのものにして。震える右手で握り返した円堂の手は、痛いくらい熱かった。…あれ、夢、じゃない?



右目だけを瞑って











この後、右隣じゃ顔が見られなくてやきもきする佐久間と右隣で頬を染める円堂さん…と、円堂さんの右隣で色んな人が佐久間に殺気を送る姿がよく見られる様になります。そんな佐久円、プライスレス。

title by 亡霊



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