佐久間は意外と可愛いものが好きだ。だから動物が好きで、取り分けペンギンが好きだ。ここまでは俺でも理解できる。でも、

「えんどぉ〜」
「佐久間…重い…」

何故俺にここまで懐くのだろう。後ろからべったりと貼り付く佐久間の重みに堪えつつ思案してみる。少なくとも、FFI強化合宿前はこんなんじゃなかった筈だ。それ以前…真帝国学園として現れた時には言わずもがな。デスゾーン2を練習しに行った時はそれまでより柔らかい態度だったが、やはり今ほどではなく。…日本代表に選抜されてから、突然この調子なのだ。俺の肩にぐりぐりと額を押し付ける佐久間を横目で伺う。今にもごろごろと喉を鳴らしそうだ。

「佐久間、猫みたいだな」
「いや、円堂の方が猫っぽい。可愛い」
「……」

ネオジャパンとの試合後、源田に聞いてみた。佐久間が妙にくっついてくるんだと。源田は僅かに沈黙した後、冒頭の方程式を唱えたのだ。

『佐久間は可愛いものが好きでな』
『うん』
『動物、中でもペンギンが好きなんだ』
『うんうんっ』
『同じことなんじゃないか?』
『う…ん?』

どうしてそうなった。解らん。解らん…が、かろうじて考えられる道が一つ。佐久間は可愛いものや動物が好き。源田曰く、同じ意味で俺が好き(多分)。イコール、佐久間は俺を可愛いと思ってる…?それも、動物に対するのと同じ感覚で?………、まさかと笑い飛ばすことも出来ない。思えば、佐久間の俺への接し方は甘えるか甘やかすかのどちらかだ。とても人間に対する態度とは思えない。結論を導き出してみると、少なからずショックだった。俺は犬でも猫でもペンギンでもない。

「…佐久間」
「ん、なんだ?」
「俺は人間だぞ」
「……ぷっ」

佐久間は顔を上げて一拍置くと、なんと爆笑し始めた。俺は真面目に話をしているのに。怒りと恥ずかしさで腕を振り払うと、腹痛いと言いながら佐久間が俺の目の前に座り直す。

「はー…どうしたんだ、突然」
「……佐久間の中で、俺は犬とか猫とかと同じ気がしたんだ」
「そんなこと、ある訳ないだろ」
「じゃあペンギンか?」
「まさか」

宥める様に俺の髪を撫でる手つきは、やはり同い年のチームメイトに対するものではない様に思う。また機嫌を損ねたと理解したらしい佐久間が苦く笑った。不意に、頭を撫でていた手が動く。指先で額に触れ、瞼を掠めて、輪郭をなぞる様に頬を滑る。気付けば互いの鼻先がぶつかりそうな程、佐久間の顔が近い。鋭い橙の瞳に射抜かれて、何故か動けなくなる。

「俺は、お前のことを犬や猫やペンギンと一緒にしたことなんか一回も無い」
「じゃあ、」

どう思ってんの。そう問うよりも前に、俺の唇は佐久間に食べられてしまった。…うん、俺より佐久間の方が動物染みてたみたいだ。




あいのけもの
(世界に二人ぼっち)










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