※2期





誰が言い出しっぺかと言われると、誰とも言えない。ただ自然にそんな空気になっていたのだ。幾ら宇宙人と戦い勝つための特訓の毎日とは言え、否、だからこそ、息抜きも必要。何より、自分達は健全な男子中学生だ。これだけの人数が集まればさながら気分は修学旅行。キャラバンの中で寝袋に入ろうと、素直に眠る輩など少ないもので──まあ現状を言うならば、絶賛百物語大会に興じているという訳だ。

「次は俺だな」

ただの怖い話も鬼道くんが話すと途端に物凄く恐ろしく思えるから不思議だ。下から懐中電灯に照らされ、ゴーグルが良い感じに怪しい雰囲気を醸している。日の下でも十分に怪しいが。─とは言え、僕はあまり怖がりな方じゃないから、こういう時は怖がる人を見て楽しむことにしている。鬼道くんのおどろおどろしい語り口調に顔を引き攣らせる皆を一通り見回したところで、体の右側に温もりを感じた。視線を向ければ、顔の強張ったキャプテンがいる。年頃の男子が揃っても下世話な話にならなかった最たる理由の彼。「健全な男子中学生」が聞いて呆れるが、僕らは揃いも揃って彼を慕い、或いは好いている。いつも笑顔で大きな声を張り上げ、僕らを導いてくれる人。の筈なのだが、今は青褪めた顔色で僕に身を寄せている。嬉しい可愛いという下心はさておき、その耳元に顔を近付け潜めた声で問い掛けた。

「キャプテン、大丈夫?」
「な、ななな何言ってんだよ吹雪!俺はぜんっぜん、怖くなんかないぜ!」
「ふふ、そっか」

そのわりにはさっきより距離が縮まっている様に思うけど。という言葉は飲み込む。それで離れてしまっては勿体ない。鬼道くんの話が盛り上がるにつれて、キャプテンは小さく唸りながら僕の方にすり寄ってくる。これが全くの無意識だと言うのだから恐ろしい。当然僕の意識は隣のキャプテンにしかなく、正直言うと百物語とかどうでも良くなってきた。怖いくせに強がる様が可愛くて仕方ない。自分にその手の性癖はないと思ってたのになあ。もっとキャプテンの怖がる顔を見てみたい、なんて。

「男は当然、不安になった。しかし歩く速度を早めても早めても…足音はぴったりとついてくる」
「うぅ…っ」

いつの間にか、キャプテンは僕の腕の辺りをがっしりと掴んでいた。心なしか泣きそうにも見える。よくある話にここまで怖がれるのも凄いと思うが、流石に可哀想かもしれない。キャプテンの手に僕の手を重ねると、不安そうな瞳が此方を向いた。にっこりと笑ってみせれば、キャプテンの表情も僅かに緩む。少しは恐怖を和らげることが出来たらしい。すると、またキャプテンが僕に身を寄せてきた。最早ぴったりくっついていると言っても過言じゃない。って、これどういうこと?え?…キャプテンを見た。緊張した面持ちで鬼道くんの話を聞いている。僕にぴったりと張り付いたまま。なんだこの可愛い生き物。あーもう、手出して良いかなあ。いや駄目だ、ここで信頼を失う訳には。でもやっぱり可愛い。いやいやいや、我慢だ我慢。

「そして、男はとうとう振り向いた」
「……ふ」

我慢、

「そこには…この世のものとは思えない恐ろしい形相をした女が…」
「吹雪ぃ…っ」

できるわけなかった。気付いた時にはキャプテンに唇を重ね、それを目撃していた数人に必殺技をかまされそうになっていた。でも僕は悪くない筈だ。好きな人に密着され、縋る様に名前を呼ばれて興奮しない男がいるならそれこそ顔を見てみたい。え?そこで手を出す奴があるかって?まあ良いじゃない。結果的にはキャプテンと両想いだったって解ったんだから、ね。



きみがわるいはなし
(「人前だぞ!」だって。)
(真っ赤な顔、可愛かったなぁ)
















怖い話が苦手な円堂さんも可愛い。キャラバンいや寧ろ円堂さんの1日をストーk…いやウォッチングしたいです…。

title by 亡霊



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