FFI日本代表候補に選ばれ、久し振りに円堂くんと顔を合わせた。3ヶ月ぶりに会えた彼は相変わらず元気で、優しくて、可愛くて、あったかい。俺が好きになった円堂くんのまま。本当は、もう笑ってくれないんじゃないかとか、名前で呼んでくれないんじゃないかとか、そんな不安でいっぱいだったけれど。

「ヒロトー!」
「あ…円堂くん」

彼は、何の衒いもなく笑ってくれる。それがとても嬉しい。此方に駆け寄り世間話を振ってくる円堂くんは、トレードマークのバンダナをしていない。風呂上がりらしく、仄かにシャンプーの香りがに鼻腔を掠めた。こんな何気ない会話を交わす時間ですら、俺にとっては大切な宝物なんだってこと。円堂くんは知らないんだろうなあ。今日は誰のシュートが凄かったとか、明日はどんな練習をするんだろうとか、楽しそうに話す円堂くんに相槌を打っていると、ふとある事に気が付いた。視線が、交わらない。というか、彼の視線がゆらゆらと揺れている。話すときには真正面から相手の瞳を見る円堂くんらしからぬ事態に、眉が寄った。視線の先を辿れば、どうやら俺の髪に向いているらしい。

「…円堂くん?」
「んー?」
「俺の髪に何か付いてる?」

聞いてみると、円堂くんは俄に頬を染めて慌て出した。自分では気付いていなかった様だ。その慌てように噴き出すと、見咎めた円堂くんが決まり悪そうに頭を掻く。珍しく歯切れ悪い口調で話しながら、円堂くんが右手を伸ばし俺の髪に触れた。

「え」
「ここの跳ねてるとこが猫の耳みたいに見えて…。さっきからヒロトが頷いたりする度に揺れるから、つい」

髪を撫でられる感覚。頭が爆発するかと思った。今の俺は耳まで真っ赤だろう。だって円堂くんがこんなに近い。さっきまでより強く感じるシャンプーの香りが、早くなる鼓動に拍車をかけた。円堂くんはと言えば、勿論俺の様子に気付く筈もなく、いつの間にか曰く猫耳に似ているらしい俺の髪を両手で弄くっている。とにかく落ち着け基山ヒロト。お前は元エイリア学園最強チームのキャプテンだろ。ハイソルジャーたるものこれくらいで動揺していては話にならない。こんなことじゃ今にガゼルやバーンに蹴落とされ…いやいや違う。もう宇宙人設定じゃないんだった。とにかく落ち着いて、うん、先ずは円堂くんと少し離れよう。このままじゃ心臓が過労死する。

「円堂くんの髪の方が猫の耳に似てると思うよ」
「そうか?」

全然落ち着いてなかった。超動揺してた。心と体が全く逆の行動を取っている。特に、俺の両手は何ということを仕出かしてしまったんだろう。指先に伝わる柔らかい感触は、紛れもなく俺が円堂くんの髪の猫耳部分に触れているせいだった。端から見れば男子中学生がお互いの髪を触り合っているという奇妙な図。駄目だ離れなければ。ああ、でも円堂くんの髪柔らかいなあ。もうちょっとだけ、こうしてても許されるかなあ。と、自分の髪を不思議そうに見ていた円堂くんが、暫し考えてから小さくはにかむ。おまけに小さく首を傾けているというサービス付き。

「にゃーん。…なんちゃって」

何この可愛い生き物。衝動的に抱き締めてしまったのは仕方ないことだと思う。そんな天然小悪魔っぽいところも好きだよ、円堂くん。



盲目的なペット
(君の為だけに鳴きたい)
















ピュアだけどそこはかとなく変態臭いヒロトになってしまった…。まあ取り敢えずハッピーにゃんこの日!

title by NIL



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