全てが、余りにも突然だった。
彼はたった一瞬で、彼にとっての一番の幸いを失ったのだ。

「涼野、俺の足もう動かないって」
「円堂」
「サッカー、二度と出来ないって」

泣くでも憤るでもなく、彼は静かに絶望していた。どうしようもなかった。事故だった。仕方ない。そう言って笑いながら、深淵の淵に立っていた。彼を泣かせることも憤らせることも出来ない自分はただ無力で。何も出来ない子供でしかない。傍に居るだけで、私に一体何が出来る。

「俺、大丈夫だよ。涼野が傍に居てくれるし。俺自身はプレイ出来なくたって、涼野が俺の分までプレイしてくれるだろ。もう足が動かなくたってサッカーが好きなことに変わりはないしな!だから、大丈夫だよ」
「円堂、」

捲し立てる彼を抱き締めるしか出来ない両腕を、いっそ切り落としてしまいたい。円堂。私は知っている、知っているんだ。見舞いの品にと持ってこられたサッカーボールにも、サッカー雑誌にも、君が一度も触れていないこと。君が尊敬してやまない祖父の写真立てが伏せられていること。知っているんだ。君がもう世界に絶望してしまったことを。私は君の幸いにはなり得なかった。解っていたのに、胸が痛い。

「円堂、円堂、えん、」
「泣くなよ涼野、…なあ」

頼むから、笑って。そう言う彼の声が掠れも震えもしていない事実が、一番哀しくて仕方がなかった。


君の世界が
眠りにつく






終わり方がいつも似たり寄ったりですね。内容もか。取り敢えず円堂さんごめんなさい。
2011/02/09 23:38




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