※二人は高校生



「あ、雨」

高校にあがってから始めた自転車での通学。歩くよりは楽なのだが、如何せん雨が降ると面倒だった。朝は晴れていたのに、学校が終わった途端降りだした雨に気分は急降下。部活も休みだから寄り道でもと思っていたのに、そんな気分でも無くなってしまった。まあ、自転車に乗れない程の強さじゃないのがせめてもの救いだろう。

「あれ、マックスも今帰り?」
「円堂」

中学生の頃より少し落ち着いたアルトボイス。途端に気分が上昇する。我ながら現金な奴。僕の隣に並び空を見上げている円堂は、その天気に眉を寄せた。彼のことだから折り畳み傘なんてものは持ち歩いていないんだろう。いや、それ以上に帰りがけに河川敷でボールを蹴れないのを残念に思っている筈だ。中学生の頃から変わらないサッカー馬鹿ぶりに苦笑する。そこに恋した訳だけど、サッカー馬鹿すぎて恋愛なんか二の次三の次、いや四の次…下手したら全く考えていない円堂。果たして僕の恋が実るときは来るのだろうか。と、不意に静寂が終わる。

「マックス、チャリ通だろ?」
「うん。でも乗れないことないし、チャリで帰るつもり」
「そっか」

頷いたきりの円堂を見て、名案が浮かぶ。円堂に話す前に一度呼吸し、何気なさを忘れないよう意識した。大概のことは器用にこなせる僕だって、好きな人にアプローチする時くらいは人並みに緊張もする。

「円堂も一緒に乗ってく?」
「…え、二人乗り?」
「嫌なら一人で濡れて帰りなよ」
「や、乗るっ!乗せて!」

慌てて追いかける円堂を引き連れて自転車置き場に向かう。円堂と二人乗り。…考えただけでドキドキしてしまうのは仕方ない。黙ったままだと緊張しているのがバレてしまいそうで、適当な話を繰り返す。

「そういえば、円堂も普段チャリ通じゃなかったっけ?」
「えっ、そ、そうだけど…その、壊れちゃって今修理出してんだ!」
「……ふうん、そう、なんだ」

どうしよう、にやける。僕は視力には自信があるけれど、さっき円堂は左手を慌てて隠した。その手から零れていたのは、円堂の自転車の鍵に付いているサッカーボール型のキーホルダーだったように思う。──案外、僕の恋が実る日は近いのかも。自転車のペダルを心持ちゆっくりと漕ぎながら、今日の雨に感謝した。


その左手に
隠されたもの






そして翌日揃って風邪を引くと。松円も大好きです。初期雷門が可愛すぎて…つらい…。
2011/02/19 23:49




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