八十年先の未来で見上げた空は、なんでか灰色だった。

「未来かあ」

口に出してみる。現実感はない。けれど、今この瞬間が嘘や冗談やドッキリなんかじゃないことも解っていた。ここは、ちがう。俺が今まで生きてきた場所じゃない。そう肌で感じていた。だって、何もかもが冷たい。空気も、朝も、夜も、大地も、空も。遠くから指をさし、けれど俺の耳元で、お前は要らないと囁く。夢の話だ。けれど本当のことだった。この場所の全てが俺を否定する。

「俺、殺されるのかな?」

突然連れてこられた未来で、監禁されて。監視されて。最期の瞬間をこの場所で迎えるのだろうか。小さな部屋には必要最低限の家具と、やはり小さな窓しか無い。逃げる様な隙も無ければそんな気力も無かった。疲れていた。この未来というところは、酷く、いきが、しづらい。自覚すると余計に苦しくなった。呼吸という行為は、どうやってするのだったか。変なところに空気が入って、ひゅう、と奇妙な音が喉から漏れる。これは、と思った瞬間、俺以外の声が部屋に響いた。

「円堂守」

背を擦られた訳でも、駆け寄られた訳ですら、ない。名前を呼ばれただけだ。それなのに不意に楽になって、呼吸とは酸素を吸い二酸化炭素を吐くということだと思い出したのだった。落ち着いてから振り返ると、俺の名前を呼んだ主が、定められているらしい位置から一歩も動かないまま無感情に俺を見ている。そんなことを考えてる場合じゃないけど、嬉しかった。

「ミストレ」

まあ良いか。ミストレがいる場所で死ねるなら。いや、ミストレのいる場所でこそ死にたい。俺の想いは通じなかったけど、それでも良いや。だって、監視役は俺と話しちゃいけないのに、ミストレはさっき俺の名前を呼んでくれた。それが俺にとっての全てだから。


青の虚ろい






何故明るくならないし。そしてオーガ円を書こうとすると何故かミス円になる。ミストレたんの呪いかなあ…。
2011/02/18 23:27




「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -