シンタロー成り代わりエネオス2
成主視点
今まで、わたしとエネの間にある、「画面」という壁を邪魔だと思ったことは、何度もある。エネは電子機器の中でしか生きられないと言う事は、頭では分かっているのだけれど、それでも
わたしは彼に触れたいと思うのだ。
エネは人間ではない。人造人間?とでもいうのだろうか。少し前に、「俺は不死身なので、死ぬことはありません。」なんてことを言っていた気がする。その時のエネの顔は、どこか傷ついたような、苦しそうな、そんな顔をしていた。でも、いくら不死身と言えど、風邪を引いたりもするようだ。まあ、エネが風邪を引いた日には何故かわたしのPCが悲鳴を上げるのだけれど。
そんな事を思いながらふとエネに視線を向けると、少し顔色が悪かったのでぎょっとした。
「エネ、大丈夫なの?さっきから顔色悪いけど、風邪でもひいてるんじゃあ」
「これくらいすぐ治りますよ。平気です。」
「…そう、ならいいけど…。無理しないでね」
「はい。」
飄々とそう答えるエネに少し、苦笑いが零れた。
エネ、本当に隠すの上手だなあ。
尊敬するわ、なんて。
「…ご主人、少し過保護じゃありませんか?」
「そんなことないよ。エネはわたしの大事な、」
そこまで言って、言葉を止める。
エネはわたしの大事な?大事な、なに?今私は何を言おうとしたの?ぐるぐると一瞬にして頭を駆け巡る疑問に、首を傾げた。あれ、あれれ?いつもみたいに答えが出てこないんだけど、どういうこと?こんな時には出てこないなんて、使えない能力だこと。
あ、でも、普段言わないことを言ってみようか。
「…エネ」
「なんでしょう」
「いつもありがとう。エネがわたしのところに来てくれて、わたし本当に嬉しいよ」
エネは心底驚いた。という顔をした。わたしが普段素直にものを言わないから、反応に困ってるんだろうなあ。あわあわとしているエネに、なんだか胸の奥があったかくなってきて、自然と頬が緩む。じんわりと頬が色付いてきたエネに「あれ、照れてる?」と聞くと、素っ気なく「照れてませーんよー」と返ってきた。可愛いんだから、もう。
「うっそだあ」
今まで、エネとわたしの間にある、「画面」という壁を邪魔だと思ったことは何度もある。
「エーネ」
「…何ですか」
何度も何度も、思ったことはあったのだけれど
「大好き」
そう言ったら、耳まで真っ赤にする君が愛おしくて
今、本当に君とわたしの間にある壁を取り除きたいと思ったよ。