成り代わり | ナノ

モモ成り代わりでセト


あのね、セトさんって、世界で一番素敵な人だと思うの。ええと、素敵意外にも、もっと彼にピッタリな言葉もあるとは思うのだけれど、ほら、わたしって、頭が悪いから、素敵意外に言葉が見つからないの。何処が素敵かって聞かれれば、そうだなあ、ひとつめは、初対面でわたしがアイドルだって、初めて知ったこと。セトさん、あまりテレビを見ないみたい。テレビをあまり見ない人って、わたし、好きなの。ほら、わたし一応アイドルだから、テレビによく出るんだよね。最近レギュラー番組がまた増えちゃってテレビをつける度わたしの顔が映るから、なんだか恥ずかしい。ふたつめに素敵なところは、優しくて紳士的なところ。必ず女の子を優先してたり、さりげなく車道側を歩いてくれてたり、そういうところかなあ。最後にみっつめ、これは私が一番彼の事を素敵だと思う理由。わたしが仕事で失敗したりして落ち込んだりしてると、誰よりも先に気付いて、わたしの頭を撫でてくれることかなあ。本当、あの時のセトさんはとてもかっこいいし、好き。だってとても優しい目をして、頭を撫でてくれるんだもの。意地悪なカノさんやお兄ちゃんとは、大違い。

「そう思わない?マリーちゃん。」
「名前は、セトが大好きなんだねえ。」
「うん、好き。でもマリーちゃんも大好きだよ。」

 そう言って抱き着けば、マリーちゃんは頬を赤く染めて、嬉しそうに顔を綻ばせる。もう、かわいいんだから。キドさんやエネちゃんも可愛いけれど、私的にはマリーちゃんが一番かわいいと思う。そんな事を思いながら、マリーちゃんにぎゅうぎゅう抱き着いていると、後ろからシャッターを切る音が聞こえて、振り返る。そこには猫のような釣り目を細め、カメラを片手ににんまりと笑うカノさんがいた。ああ、そうそう。カノさんはね、わたしの一番の敵なの。わたしがセトさんに会いに行こうとすれば阻止!とか言ってセトさんに会いに行かせてくれないし、セトさんがわたしに話しかけてくれたと思ったら、急に話に入ってきて邪魔してくるし。カノさん、きっとセトさんのこと好きなんだ。この間マリーちゃんにその話をしたら、マリーちゃんったら「なにそれ美味しい!名前→セト←カノってことだよね!?」なんて大興奮して大変だった。
 マリーちゃんって、もしかして、スタイリストさんが言っていた「腐女子」ってやつだったりする?ああ、そんな顔しないでよ。わたし、たとえマリーちゃんがその腐女子ってやつでも、気にしないから。うわっ、びっくりした!急に抱き着かないでよ、…あれ、カノさん、まだいたんですか?…え、セトさんが呼んでる!?本当ですか、有難う御座います!マリーちゃん、わたし行ってくるね!セトさあん!
 ばたばたと走り去っていく彼女の背中を、カノは面白くなさそうに見つめた。たまには、僕の方に振り向いてくれたっていいじゃない。唇を尖らせるカノにマリーは微笑む。

「うふふ、恋する女の子は強いねぇ」
「…そうだね」
「カノも、少しは素直になればいいのに」
「そりゃ、誰だって、好きな子が別の男の話ばかりしてたら、嫌でしょ。あと僕はセトが好きな訳じゃないからね」
「知ってるよ。」

ああ、嬉しい、嬉しい。セトさんがわたしを呼んでるなんて、早くいかなくちゃ。あ、そうそう。わたしの、セトさんの一番好きなところはね、なんといっても

「セトさん!」
「あ、待ってたっスよ、名前ちゃん」

この眩しい笑顔!

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