TURN-18>>
ダイヤルロックオン!龍亞のディフォーマーデッキ!

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現在、デュエル・フォーチュンカップ会場付近の広場。今はフォーチュンカップ当日であり、参加する遊星そして龍亞と龍可の双子、矢薙や氷室と会場まで来ていた。

姫兎は一人、ベンチに座り頬杖を付いていた。
正直女性にしてはあまり良い格好ではないが、視線は定まっていなく考え事をしている様子。何と無く、その目と同じ色をした空を見上げているようにも見える。


「……」


昨日の出来事を考えていた。

自分達の居た大門エリアに突如現れ、辺りを破壊するように荒らしていった、毒々しい真っ赤な薔薇のように美しい竜を連れたあの《黒薔薇の魔女》…。
そして同時に起こった、自分の頭痛と遊星の腕に浮かび上がった痣…矢薙の云う《竜の痣》の事。

あれは間違いなく、ジャックの時と同じだった。
意識を失ったので良く覚えているわけではないが、確かに気を失う前に似たような頭痛が引き起こったのは間違いない。
そして目を覚ました時に見た、遊星の腕にあった痣。


「…まさか、あの魔女にも…」

「姫兎、姫兎ーっ!」

「わっ!?」


考えていた事が思わず口に出た途端、特に何も凝視せずに景色しか写っていなかった視界に突然ライトグリーンでいっぱいになった。

思わず小さく悲鳴を上げ後ろに下がると、自分の名を呼んだ声の主の姿が写る。


「る、龍亞…考え事してる時に目の前に顔出さないで…」


びっくりするから、と付け足し息を吐くと、龍亞は考え事をしてるとは思わなかったらしく、小さく首を傾げた。


「だっと姫兎ボーッとしてるからさ、何してんのかなーって」

「あはは…」


無垢にそう言ってくるので姫兎はこれ以上咎める事も何も出来ず、小さく苦笑を漏らした。

すると龍亞がはっ、と何かを思い出した仕種を見せると、突然姫兎に飛び付く。またもや唐突な動きに姫兎はまた声を上げた。


「そうだった!姫兎!昨日デュエルしてくれるって約束したよね!」

「え、あ、ええしたわね」

「だからやろ!ね?やろーよ!やってくれるって約束ー!」

「えぇ?い、今から?」


うん!と、無邪気に笑ってくる龍亞に、姫兎は苦笑しながら小さく頭を抱えた。服を掴みねだるように揺さ振ってくる様子から見れば、多分承諾するまで離さないだろう。
約束したとはいえ、これはまた突然としたお願い。もうすぐフォーチュンカップが始まるというのに。

しかし、此処で姫兎がフォーチュンカップの事で断る理由は無かった。…無論、断る訳が無い。
姫兎は龍亞の背中を二、三度優しく叩き、軽々と彼の小さな体を抱き上げ自分の膝の上から地面に足を付けさせた。
少しばかり驚いた表情で姫兎を見上げる龍亞。姫兎は立ち上がり服を整えると、いつもの挑戦的な笑みを見せた。


「よし、良いわ!フォーチュンカップのリハーサルでもしようじゃない。全力でかかってらっしゃい、龍亞!」


人差し指をびしりと立て龍亞に向けると、龍亞は驚愕の表情から一気に歓喜の笑みへと変わっていった。

二人は出来るだけあまり人のいない路地へと入り、互いに向かい合わせでデッキをセットした。


「デュエル!!」


デュエル開始の合図が上がる。


「さ、先行は龍亞からよ」

「うん!行くよ姫兎!おれのターン、ドロー!」


シャッキーン!と、遊星との闘いの時と同じ効果音の声を上げ、龍亞独自のポーズを決める。姫兎はその佐中、頭の中で以前の龍亞の闘い方を練り組んでいた。

龍亞のデッキは『D.(ディフォーマー)』をコンセプトとした機械族中心のデッキ。以前遊星に負けてしまったその悔しさをバネに、彼から学んだ事を生かしてデッキを組み直したと聞いた。


「(…私だけ相手のデッキを知っているのは不公平ね)」

「いくよ姫兎!オレは『D.(ディフォーマー)モバホン[ATK/100]』を召喚!」


フ、と姫兎が思考を途切らせたのを見計らったかのように、龍亞は携帯電話型のモンスター『D.(ディフォーマー)モバホン』を召喚した。召喚したと同時に攻撃表示型となり、『モバホン』は手足と顔を作り出し、ロボットのような姿で龍亞のフィールドに降り立つ。

その姿に龍亞が「かっこいー!」と跳びはねる。


「『D.(ディフォーマー)モバホン』のモンスター効果は攻撃表示の時、ダイヤルの1から6で止まった数だけ自分のカードをめくり、そのカードがレベル4以下だったら、特殊召喚が出来るんだ!」


いっくぞー!と声を上げ、龍亞はぐるぐると腕を回す。その動きと同時に『モバホン』のダイヤルがランダムに点滅を始めた。
チカチカと点滅するダイヤルの光が選び止まった数字は、3だ。


「3に決まった!じゃあ3枚めくるぞ…」


1枚、1枚カードを引き、そして3枚目のカードの絵柄を覗く。すると龍亞の顔が歓喜に満ち溢れる。


「よっしゃー!おれがめくったカードはレベル3の『D.(ディフォーマー)マグネンU[ATK/800]』だ!攻撃表示で召喚!」


U字型の磁石と同じ形をした『D.(ディフォーマー)マグネンU』は、先ほど同様龍亞の「シャッキーン!」という声と同時に人型ロボットへと形を変えた。
龍亞は再び跳ねながら自慢げに「かっこいいだろー!」と声を上げる。


「おれはカードを1枚伏せてターンエンド!さあ姫兎のターンだ!早く姫兎のカードを見せてよ!」

「ええ、私のターン!」


シュッ、とデッキからカードを引くと姫兎は手札と比較を始める。龍亞は今か今かと姫兎のカードの登場を待ち切れない様子で瞳を輝かせていた。


「なんだなんだ?いないと思ったらこんなところでデュエルしてたのか」

「おーおーやっとるのー!」


すると二人がいなくなった事に気が付き騒ぎを聞き取ったのか、遊星や龍可、そしてフォーチュンカップを見に来た矢薙や氷室、そして天兵がぞろぞろとやって来た。

龍可は二人がデュエルをしている姿を見つけると、呆れたようにため息を着いた。


「龍亞ったら…姫兎にまでデュエル頼んだのね。まったく、姫兎に迷惑じゃない」

「いや、そうでもない」


え?と、龍可は自分の隣に立って二人を見ている遊星を見上げた。
遊星は小さく笑みを見せている。


「姫兎はデュエル楽しんでいる、龍亞もな」

「…そうだといいんだけど」


龍可は不安そうに再びデュエルをしている二人に視線を向けた。


「『ゼファー・エンジェル[ATK/1400]』を攻撃表示で召喚!」


ぽんっ、と可愛らしい効果音の中姫兎の場に現れたのは杖を持った天使。
見慣れないカードモンスターに龍亞は不思議そうに「おおー…」と、小さく声を漏らした。


「『ゼファー・エンジェル』でバトル!」

「待ってましたっ!罠(トラップ)カード『ディフォーム』発動!」


罠(トラップ)カードが発動されても攻撃は止めない『ゼファー・エンジェル』は、そのまま龍亞のモンスターに攻撃をしようと杖を振り上げた。途端、龍亞の『D.(ディフォーマー)マグネンU』が元のU字型磁石へと姿を変えたのだ。
姫兎の『ゼファー・エンジェル』は驚いた様子で攻撃を中断し、姫兎の場に戻って来る。


「どうだ!この罠(トラップ)は『D.(ディフォーマー)』を変形させ、バトルを無効にするんだ!」

「うん、成る程…やるじゃない龍亞!面白い罠(トラップ)ね」

「だろだろだろ!この変形を見せたかったんだよね!」


ワクワクとした様子で再び腕を回す龍亞。
と、ふと視線を感じた横を向いた姫兎がやっと遊星たちが来ている事に気が付いた。


「あれ、みんな来てたんだ」

「ああ」

「姫兎がデュエルしてるみたいだし、姫兎のデッキも見物だと思ってな」


遊星の相槌の次に氷室が楽しそうに笑いながら腕を組む。
氷室はまだ姫兎の収容所での闘いしか見ていないので、彼女本人のバトルスタイルを見るのは初めてだ。遊星同様、始めて手に取ったカードを一瞬で操った姫兎の本来の闘い方は、いくら相手が幼子でもどんな見物なのは間違いない。


「よーし!おれも頑張ろうっと!遊星に前より強くなったところを見せてやるんだ!おれのターン、ドロー!」


観客が増えたことに龍亞の興奮をさらに煽る事となった。ワクワクしながら無邪気な瞳でカードを見つめ、デッキから元気よくカードを引く。






「『プレーヴ・ナイト』の攻撃!セイクレッド・レイ!!」


「うわぁぁぁあっ!」


龍亞がぺたりと地面に倒れ込んだと同時に、フィールドに存在したモンスターが姿を消した。ピーッ、と龍亞のデュエルディスクからライフが0となった音が合図となって周りに響き渡る。
姫兎の場に『プレーヴ・ナイト』が舞い戻り、姿を消した。今回は姫兎の勝利だ。

姫兎はディスクを仕舞い、龍亞へ歩み寄る。負けた龍亞は悔しそうに顔を擦っていた。泣き顔を見られたくないからだろう。


「…良いデュエルだったわよ。前に遊星と闘ってた時よりずっと私の戦略も見てたし」

「ぐずっ…、ほんと?」

「ああ」


遊星が頷くと、龍亞はぱっと顔を上げた。そして嬉しそうに立ち上がる。


「姫兎、…またデュエルしてくれるよね!」

「勿論!いつでもかかってきなさい」


どんと胸を張って言う姫兎は満足そうに笑っていた。

パンッ、パン!

すると、会場の方から青い空に薄い花火が跳ね上がった。フォーチュンカップ開催の合図。会場からわいわいとお祭り騒ぎの声が聞こえてくる。
遊星は会場を見上げた。その隣に、姫兎が歩み寄る。


「いよいよね」

「ああ、必ずラリーたちを助ける。そして…」


ジャックとの決着をつける。
今会場の中にいるジャックもまた、空を見上げていた。






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