「チェレン!デートしよう!」
と、まあ実にキラキラした笑顔で唐突にそんな事を幼なじみに言われたのは半日前の話だ。
というかなんでいきなりデートなんだろうか。
デートならもっと前に計画を立ててとか、噴水の前で待ち合わせするとか、そんな事が前提にあって実行されるものじゃないだろうか。まさか修行という名のバトルを終えて休憩に入った矢先にいきなり現れて前置き無く言うものだから、ロマンチックなんか初っ端から壊滅的と思う。いやもっとツッコむべき場所はあるかもしれないけど。
そもそも、恋愛知識は滅法無いトウコは『デート』なんて知っているのだろうか。
「チェレン!ほらほら、次観覧車乗ろ!」
「わ、分かったから引っ張らないでよっ」
で、そんなぼくの心配(?)を余所にさっさとぼくを掴むと、そのままあちらこちらに連れて行かれた。
だけど、あんな誘い方をした割にはデートコース、というか王道の道のりを心得ているみたいだった。
最初にサンヨウのレストランでお茶、その後は噴水周りを散歩して、次にライモンのミュージカル観賞。端から見れば…その、なんというか、付き合ってるカップルに見えたと思う。なんせライモンを並んで歩いてたら、すれ違った知らないおばさんに「あら、可愛いカップルさんね」って言われたし。しかも否定しないでえへへと笑ってるトウコを見たら、どうも何とも言えなかった。
で、日が大分暮れてきたの現在は遊園地にいる。
「えへー、チェレンと2人で観覧車乗るの初めてだよね!」
「うん、まあ…」
そうだね、と返せばトウコは夕方の景色は一段と最高なのよ!と、窓の外を指差す。
「あのさ、トウコ」
「なーに?」
「トウコは、デートって意味分かってる?」
え?と、トウコは一度不思議そうに目を丸くした。いきなり外れた質問に驚いたのかもしれない。だがすぐに、勿論、解ってるわよ!と、自信ありげに胸を張った。
「ベルからちゃんと教わったもの!」
……ベル?
聞き慣れたもう1人の幼なじみの名前が出てきて、何となく理解が出来たような気がする。いつもこう云った遊び回る行動は3人でするのに、今回ベルがいないという疑問はぼくの中で一気に解決した。
「お互いが好きな男女が一緒にお茶したり、散歩したり、こうやって観覧車乗るんでしょ!だから、最近チェレンとあんまり会えてなかったからチェレンとデートしておいでってベルが!」
どうだ!と言いそうなくらい得意げな話すトウコだけど、何かどっか違うような気がする。しかも事の始まりはベルというわけか。
彼女は時々、というかしょっちゅう見当外れの事を言うから恐ろしい。
「なんで?チェレン嫌だった?」
「いや、そんな事無いよ。ぼくだってトウコが好きだし」
なら良かった!と眩しいくらい笑うトウコ。
何か違う気がするけど、まあいいか。そう思った矢先、突然トウコが、あーっ!!と叫んだ。え、なに?と問おうとした頃には、視界いっぱいにトウコの顔があった。ついでに唇に柔らかい感触…って、え?
「大事なこと忘れるとこだったわ!デートの最後は観覧車の中でキスしなきゃいけなかったんだった!」
「………一応聞くけど、誰から聞いたの?」
「ベル!!」
うん、だよね。
仕掛けてきた当の本人は、教えて貰った時チェレンとトウコだけがキスなんてずるい!って言ってたからベルにもしてあげた!とほっぺを指差して恥ずかしげも無く笑っていた。
ベルも本気でそう思っててトウコに教えたのか、それともドラマででも見たベタなシーンだけを教えたのか。どっちにしろトウコは真に受けるから凄い。
というか、今気が付いたけど今回は主導権がトウコに持って行かれっぱなしじゃないか。これは仮にもデートなら、男子が女子にひっぱられっばなしじゃ格好が悪い。
ひとつくらいなら、いいよね。
「トウコ、ひとつ間違い。最後のキスは女の子からじゃなくて、男の子からしないといけないんだ」
「えっ、そうなの?」
間違えた!と云わんばかりに慌てるトウコにくすりと笑い、今度はぼくからトウコに顔を近付けた。
地上に辿り付くまで、後少し。
「トウコ」
「ん、なに?」
「デートって、一度したなら一生その人としかしちゃいけないから、他の男の人とはしないでね」
またちょっと違う知識だけど、トウコはチェレン以上に仲良くなる男の子なんていないわよ!と笑った。それには少し自信がある。自惚れとか、そういうのじゃなく。それにぼくもこれから先、トウコより仲良くなる女の子はいないと思うし。
ぼくも大分ずる賢くなったかな、またくすりと笑い、夕日が沈む中トウコの手を取り帰り道を歩いた。
liar date
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シチュはお任せとのことで好き勝手な結果に´`
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