リッドと握手を交わしていると、あ!リッドずるい!と、ファラが声を上げる。苦笑いを返すリッドを横に、ファラもアレイスに駆け寄ると片手を差し出した。仲良くしようね!と元気いっぱいに笑顔を向けられ、アレイスも返すように、おう!と笑いファラの手を握る。女性らしい細い手だがアレイスの手を握る力は強いし、しっかりしていた。ああ、きっと彼女は強いなとアレイスは心のどこかで思った。


「はいはーい!じゃあ次はあたしたちね!」


どちらとなくファラと手を離すと、リッドたちの後ろに立っていた一人の少女が声を上げた。
癖のあるボブの真っ赤な髪をしてまん丸の瞳をした、愛らしい少女だ。しかし髪と同じに近いルビー色の瞳は、いかにも気が強そうにギラギラ輝いている。さらにはヘソ出しの服でさらに強調された、女性なら誰しも憧れるくらいのウエストを持つ細体の腰には全く似合わない、二丁の拳銃を携えている。


「あたしはイリア、イリア・アニーミよ!よろしくぅ!」


元気よく名乗った赤い少女、イリアにアレイスは、イリアか、よろしくな!と返事をする。

と、その時イリアの後ろになにやら銀色がちらちらと見え隠れしている。隠れている、というより顔が出せないと云った様子だ。アレイスとは違う、大きくて薄いエメラルドの瞳が恥ずかしそうにちらちらアレイスを伺っていたから。可愛らしい顔をしているが、イリアよりも背が高い。少年のようだ。
アレイスがなんだなんだと聞く前に、イリアが気が付いたのか、少々面倒くさそうな顔で溜め息を付くと、その銀色を自分の前に引っ張り出した。


「うわっ!な、なにするの、イリア!?」

「いいからコソコソしてないでちゃっちゃと挨拶しなさいよ!ルカ!」


ルカと呼ばれた銀色の少年はイリアに背中を叩かれ、よろけた拍子にアレイスのすぐそばまで足を下ろした。

人見知りなのか、ルカは一度アレイスと視線が合うと、緊張したのか慌てて視線を外しつつしゃんと背筋を伸ばす。そしてすぐに、えーっとえーっと、と下を向いて口ごもり始めてしまう。
ゆらゆらと身体を揺らしながらも、アレイスはルカの言葉を待つ。
ちらり、とルカがアレイスの方を確認するように視線を上げた。アレイスはニッ、と笑ってみせる。するとルカは少し安心したのか、ほうと息を吐いた。


「えっ、と…、僕、ルカ・ミルダっていいます。よろしくお願いしますアレイスさん」


ぺこりと礼儀正しく頭を下げたルカは、よろしくなー!とアレイスの陽気な返事を聞くと、やった言えた…!と、ひとりガッツポーズを決めた。心の中で。

しかし自分に感動していたルカを遮るように、イリアはいかにも機嫌悪そうに、あーもう!と声を上げた。ルカが、ひっ、と喉を鳴らす。


「相変わらず堅っ苦しい挨拶ねー!」

「で、でも初対面の挨拶って大事だと思うよ…。やっぱり丁寧にしておくのが…」

「ふふーん、アンタ海賊の掟を知らないの?」


イシシ、といかにも悪い顔をしたイリアは女性らしかぬ笑い声を発した。
可愛いのにもったいねーなあ、とどこか他人事のように考えつつアレイスはイリアの言葉を聞く。


「アレイスは今日からメンバー入りなんでしょ?じゃああたしたち先輩じゃん!“後輩は先輩に絶対服従”!」

「…それ、今イリアが決めたんでしょ」


ルカが呆れたように言うと、あらン、ルカくんったら鋭いわね!と、イリアは悪びれなく笑った。周りを見ても、どうやらよくある光景らしく誰も気には止めていない。

そんな二人のやりとりを楽しそうに見ていたアレイスははあ、と疲れたように息を吐くルカに声をかける。


「えっと、ルカでいいか?」

「え、はいアレイスさん…」

「敬語はいらねぇよ!後、さんも無し!友達になるんだし、堅苦しいのは抜きな」


駄目か?アレイスが問いかけると、ルカは一度ぽかんと口を開け間を置くと、すぐに首を大きく横に振った。


「はい…!じゃない、ううん!友達…か。ありがとう、よろしくね…アレイス」

「ん?なんでお礼なんか言うんだよ」

「え!?ご、ごめん…」

「なんで謝るんだよ!?」


こーゆー奴なのよ…、イリアに耳打ちされアレイスは苦笑する。

ふとイリアがカノンノと話をしているのを見て、アレイスはベッドの側に立ったままの側にルカに声をかけた。


「そういえば、ルカ」

「え、なに?」

「イリアって可愛いよな、ルカの彼女か?」


ええええ!?と、予想外の質問にルカが声を上げた。当然部屋中に響き、話題のイリアを含め全員の視線がルカに突き刺さる。
う、とルカが一度息を呑むと、隠れるようにベッドの端にアレイスを引き込んだ。ルカの思わぬ行動に、うわ、と声を上げたが、それどころじゃないルカはみんなの視線に半泣きしながら、アレイスにだけ聞こえるように小さな声で答えた。


「ち、ちちち違うよ!彼女はその…というか急になに言い出すのさ!」

「いやなんとなく。仲良さげに見えたから」

「うう…本当にそうならいいんだけどね…」


落ち込んだように肩を落としたルカを見て、アレイスは無垢な思いを抱えるルカの肩を叩いた。




(純粋な思い、無垢なる絆となれ) ハロー、イノセンス
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