初めて会った時、私は貴女を凄く眩しく感じたの。光に包まれて降りてきたからとか、そんなんじゃなくて。貴女自身が、私には凄く眩しく感じた。優しくて、暖かくて、人にはない穏和な輝き。いきなり空から降りてきたら、普通変なの、とか気味悪いとか思うはずなのに、全然そんなの無かった。

 だから、その時思った。
 ああこの人が私の光なんだって。

 生まれてすぐに両親を亡くした私は、ロックスに育ててもらいながら色んな地を転々としてきた。
 そのせいもあって友達とか全然できなかった。何度か年の近い人たちにはあったけど、ロックスに育てられたと言ったりしたら、酷くからかわれたりして、仲良くしてもらえなかった。でもロックスに育ててもらったのは私の誇りだし、恥じる事じゃない。言い返しても、笑われるだけで。

 みんな、真っ暗だった。輝きがないから、目の前の私を照らして本当の私を見つけてくれる人はいなくて。

 だから、彼女に会った瞬間、私は初めて見る光に、嬉しくて嬉しくて仕方なかった。居なくなくなって欲しくなくて、必死に手を伸ばした。私を見てくれる、私を照らしてくれる。
 やっと見つけた、光。


 ……だけど。




「ねえ、ラザリスの事が世界の危機なら…これ全部終わったら、レシェンは世界樹に帰っちゃうの?」




 その言葉を聞いて、体の奥の何かが凍った気がした。

 帰る?何処に、誰が?
 世界樹へと帰る、ディセンダーは全てが終わったらいなくなる。自分が導いた平和な世界では生きられない。生きる為じゃなくて、ただ世界を平和にする為だけに生まれたから。世界が平和になったら、世界を平和にするもうディセンダーは必要ないから。
 なんで、あの光は生きる事を許されないのか、分からない。人を照らして終わり。私に光を与え教えてくれて、終わり?




「カノンノ?」




 彼女が私の名前を呼ぶ声がして、ふと自分の思考から現実に引き戻された。慌てて声のした方を見ると、不思議そうに私の顔を覗いてくるレシェンがいた。こてん、と首を傾げて少し眉を下げている。




「ぼう、っとしてるみたいでしたから。…あ、もしかしてサンドイッチ、美味しくなかったですか?」




 考え事が頭にありすぎていまいちなにがあったか理解できなくて、え?え?と、辺りを見回していると、レシェンが私の手がある方を指差した。私の両手に何か握っている感触がある。見れば、少しぱさついてしまっている食べかけのサンドイッチを持っていた。
 それを見て思い出した。今はレシェンと2人で甲板でお昼を食べている最中だった。このサンドイッチは、お昼を2人で食べようと約束をした時、じゃあ自分がお昼を作ってくると彼女が持ってきてくれたもの。




「一応、クレアに教えてもらったんですけど、…口に合いませんでしたか?」


「ううんっ!そんな事無い!すっごく美味しいよ!」




 慌ててサンドイッチを口に運ぶと、なら良かったと彼女は優しく笑った。

 その笑顔を見て、胸がズキリと痛んだ。
 この先、彼女が生きられる未来がないのに、なんで彼女の笑顔はこんなにも優しいのだろう。まるで、消えるのが至極当然のように受け止めているようで。何で普通に笑っている彼女の顔を、この光を、もうすぐ見られなくなるのだろう。こんなの、おかしいよ。




「…私、レシェンがいない未来なら、世界が平和にならなくて良い…」




 思わず口にしてしまった。全く脈絡がない独り言だったはずで、言った矢先に後悔した。でも、言いたくて仕方なかった。
 前にロイドが言っていた。誰かが犠牲になるのが当たり前な世界なんておかしい、って。そうだよ、レシェンが悪い訳じゃないのに、なんでレシェンが消えないといけないの。間違ってるよ。

 するとレシェンは目をぱちくりさせて、驚いたように私を見ていた。けれど、そのまま何も言わずふっ、と彼女は笑った。予想外な彼女の反応に、今度は私がえ?と、目を瞬かせる番だった。
 その次に感じたのは、私の頭を撫でる温かい感覚。




「レシェン…?」


「そう言ってくれて有り難う、カノンノ。でも、自分は消えるつもりなんてさらさらありませんよ」


「え…!」




 方法があるの!?と、嬉々として彼女に問いかけると、彼女はくすりと笑った。




「いえ、まだ解りません」


「…ふえっ?」




 解りません、って…。そんな楽しそうに言われると、どうにもなんて言えばいいのか。

 でも、不思議。彼女が消えないと言ったら、方法なんて私には解らないのに、なんだかそうなる気がした。今までのもやもやという、私の心を覆っていた何かが一気に吹き飛んだ気がした。




「………あ、」




 また、光った。

 彼女の光が、私の心にあったもやもやの闇を貫いた。そっと胸に手を当ててみる。うん、やっぱり今は彼女の光でいっぱい。あの不安や悲観した気持ちが彼女の光で照らされて、浄化された。
 また私は、普通に笑える。




「私も、ありがとう」




 なにがですか?レシェンはそう言ってきょとんと首を傾げていたが、私は言いたかっただけだよとだけ伝えて、笑った。


キラキラ キラキラ 君が笑うなら

title by:ことばあそび
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