※夏休み企画リクエスト、ゼロス甘



すうすうと心地よく眠るレシェンは無防備である。実に無防備だ。それに、普段はポーカーフェイスであまり表情をはっきりさせない彼女も夢の世界では正直らしく、心地よさそうに、幸せそうな顔をしている。むにむにと唇を噛んだかと思えば、ごろんと寝返りを打つ。猫か。
ゼロスはそんな彼女の顔を見ながら、ため息を吐いた。いや、普段見ることが出来ない顔だから嬉しいと言えば嬉しいのだが(恋仲の関係でも、部屋は相変わらず違うので夜一緒だったことは殆ど無いし)、


「…だからって、こんなとこで寝るなよな」


まさにこんなとこ、だ。
レシェンはあろう事か、甲板の端で横になっていたのだ。今はセルシウスも居ないので、まさにレシェン貸し切り。いやだからって外のこんな固い床で寝なくてもいいだろう。
確かに今日は雲が良い具合に出ていて、ぽかぽかとした心地よい陽気。日向ぼっこでもしたら、確かに眠気を誘うかもしれない。
そこまで考えて、ゼロスはふっと吹き出してしまった。


「…やっぱ猫か」


口に出したせいか、レシェンの群青の髪が猫の毛並みに思えた。ごろごろと今にも喉でも鳴らしそうだ。反射的に、ゼロスはレシェンの髪に手を伸ばした。
決して柔らかいとは言えないその髪に、なんとなく猫を撫でる感覚で手を滑らせる。それが心地良いのか気持ちいいのか、レシェンの頬がへらりと緩んだ。

うわ、うわ!なんだ可愛いところあるじゃん!
相手が寝てるのを良いことにどこか失礼なことを思っていると、ぱちりとレシェンが目を開けた。

しまった、起こしてしまったか、とゼロスが思わず固まっていると、レシェンは寝ぼけているのか開ききらない瞳をきょろきょろさせた。そうすれば、必然的に至近距離でレシェンを見ているゼロスと目が合うわけで。
起こしたか?とゼロスが慌てて聞こうとすれば、レシェンは眠そうな瞳のまま、見たことのないふわりとした笑顔を向けてきた。普段の寡黙で大人びた彼女からは想像できない姿で、思わずゼロスは固まってしまった。二度目。
するとゼロスが固まっているのを良い事に、レシェンは自分の頭に添えられてるゼロスの手にすり寄ってきた。まるで、猫がごろごろと甘えてくるような姿で。


「レシェンっっ!?」

「…んん…」


ゼロスが混乱して手を引っ込めるタイミングを失っていると、レシェンはそのままゼロスの手にくっついたまま、再びすうすうと寝息を立て始めてしまった。

普段、自分たちを背にして前衛突っ走って魔物と戦う世界の救世主。
でも今の彼女は平和になった世界で暮らすことができている、一人の女の子なんだ。剣を持たず、こうして眠っている姿はごく普通の女の子で、自分の――。


「…ああ!くそっ…」


そう意識してしまうと、余計に今のレシェンが可愛く見えてきてしまった。優しく温かく、いつも自分を包んでくれた存在は自分たちと同じヒト。

ゼロスは真っ赤であろう顔をがばっと上げ、辺りを必死に見回す。よし、誰もいない事を確認。
寝返りのせいでぱさぱさと顔にかかっている髪の毛をレシェンがくっついていない方の手で払い、ゼロスはそっとその額に口づけた。


「いつもありがとな、ハニー。愛してる」


今なら素直に
(感謝と愛の言葉を、キミに)

「起きてる時に言って下さい、折角なら」「うわっ、ハニー起きてたのかよ!?」「今起きました」



……………
湯豆腐様リク、ゼロス甘でした。甘だけじゃ書けない…!
お返しは嬉しいんですが、こちらがネタ欲しいくらいなんですよ!ネタをください!



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