博に成り代わった現代人と銀灰の妹の話。ー兄の誕生日についてー
2021/03/16 01:05
◆博に成り代わった現代人と妹の兄の誕生日についてのちょっとした小話
(博はそんなに病んでないよ。★0.5ぐらい。)

前回の続きになります。



「何か、欲しい物はあったり…しますか?」

最近は不機嫌な天候が続いていたのでヘリは飛ぶかと心配していたが何の事なく本日の天気は久々の晴天。
柔らかな風に心地良く吹かれ少し眠たくなってきた時間帯にやってきた彼を応接室に迎えた。
いつも通りの定例的なロドスとカランドの情報共有後に、これまたいつも通りにやってくる二人きりの他愛もない世間話の時間。いつもであれば彼から話を切り出すが今日は己から話を切り出した。

率直すぎるだろうか、と思いつつも開口一番に放ったその言葉に、少しの寛ぎを見せてその長い脚を優雅に組んで紅茶を飲もうとしていたのであろう目の前の男の動きが止まる。

驚いて、いるのだろう。…多分。
その証に頭部に鎮座した一対のそれも、時折持ち主より分かりやすく主張する白い尾も動きを止め、此方を覗き込んでいた眼差しもいつもより少し大きく開かれ、その中に光る綺麗な冬色がよく見えた。

己から切り出したとはいえ、こうも長く彼との沈黙が続くのは初めてで。
少しの居心地の悪さから再度口を開こうとすればかちりと小さく陶器の重なる音がして、動きを取り戻した彼がゆったりと口を開いた。

「盟友よ、すまない。今、なんと?」
「その、欲しい物はあったりしま、す、か…。」

それは己が放った言葉を上手く飲み込めなかったのだろう彼の心境だった。
やはり率直すぎたと己の物言いに今更恥ずかしくなり語尾が小さくなりつつも先ほどと同じ言葉を繰り返す。
そして、"誕生日おめでとう"を先に述べるべきだったと自分の先走ってしまった言動を反省し、改めて、彼の誕生を祝福する言葉を口にした。

「誕生日、おめでとうございます。遅くなってしまったけど、よければ私からも祝わせて下さい。」

漸く私の突然放った言葉の理由を理解したのだろう。
開かれていたそれが見慣れた少し細いものとなり、微笑から口角が上がって柔らかそうな耳がひくりと小さく動いていた。

組んでいたその長い脚を解き、此方へと手を伸ばされる。
今の彼の纏ういつもと違う雰囲気から正直なところあまり近づきたくはなかったが、飛ばしてくる視線と催促のように更に伸ばされる手には逆らえずに席を立ち、彼の隣へと移ろうとすれば腕を掴まれ、そうしてそのまま力の入ったそれに引かれてしまえば彼の膝の上を跨ぐ恰好となってしまう。

彼は何かと私と距離が近い事を良しとする。このような二人きりの状態だとそれは特に顕著だった。

この体の"私"と彼がどういう関係だったのかは知らないがもしかすると"そういう関係"だったのかもしれないと、下手に距離を取れば怪しまれるかもしれないとなるべく彼のなすがままにさせている為、時折このような距離感のおかしい状態になってしまうが未だにこの至近距離で見るこの男の美しい顔に慣れる事はなく、赤面してしまう。この付けているマスクには何度感謝した事か。

「その祝言、頂戴した。…だが、友よ。あまりに具体性の無い卒爾な言動は感心しないな。
 私がお前の用意出来ない物を欲したらどうするつもりだ?」

「出来る範囲のもので…その、お願いします。」

短い経験からでも彼はそのような無理を振ってくるような男ではないという事は理解している…つもりだ。
注意を促す言葉の内容とは裏腹にその表情は酷く楽しそうにしているのできっと揶揄しているのであろう。
先程からぱたりぱたりとソファを叩く彼の尻尾も遊んでくれと言っているようで、

彼との物理的な距離感は気にはなったが、
これも日頃お世話になっている彼への"誕生日祝い"だと暫し言葉遊びに付き合う事にした。



まだやる気のある頃の病み度ほぼない成り代わり主と銀灰の話。
★0.5も病んでないね。0.01ぐらいなのでは?いやそれすらもない...。
更に続きを書いてもいいけどいったん此処で区切り。
妹のプレゼントはこの後、いちゃこらした後に渡してるよ。

改めて銀灰誕生日おめでとー!(遅い!)

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