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Their story ≫ 第四幕

寮部屋にて会談 其ノ三

優しいんだね、君は。

沈黙の後、蒼はそう言って、微笑んだ。
溝口はきっと、自室でこの会話を聞いているのだろうなと思いながらも、既に調べ上げられた情報しか話すつもりのない、蒼は言う。

「―――天城クンのことが、好きなんだ?」

蒼の問いかけに、劉堂はすぐには答えなかった。
視線を彷徨わせた後、口を開く。

「どうなんだろうねー?」

へらり、と笑った劉堂のその表情から、感情を読み取ることは、出来なかった。
それでも、判ることはある。

「――――コップから溢れてしまった水は、どうなると思う?」

答えは、分かりきっている。
それでも蒼は、劉堂にそう尋ねた。
溝口は何を考えているのか、一瞬止まったにも関わらず、再び動いている。

「コップには、戻せないでしょう?」

質問に答えようとした劉堂に向かい、そう言って、蒼は微笑んだ。
そうして、続ける。

「僕のところに来たのは、正解と言えば正解だけど、不正解とも言える。このゲームを始めようと言い出したのは、響山で、僕はただ、放送を流したに過ぎない。それは、君だって分かっているよね」

質問に見えて、断定。
蒼は、質問ではなく、事実確認をしていた。
その事に気付いているのか、いないのか。劉堂は、息をのみこむと、口を開いた。

「それでも、」

遊び歌を考えたのはお前だろう。

語尾を伸ばすことも忘れ、そう言った劉堂に対し、蒼は笑みを深めた。

2018.03.24


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