Their story ≫ 第四幕
寮部屋にて会談 其ノ二
ええと、それで、そう。なんでしたっけ。天城輝がこの学園に入れられた理由、でしたっけ。
蒼はそう言い、劉堂の様子を窺った。
困惑気味に溝口と蒼を見比べては、視線をさまよわせている彼を見て、キャラ作りはどうした。とは、あえて突っ込まず、彼の反応を窺い続ける。
窺うまでもなく、彼が今、どんな心理状態なのかは、ある程度、分かっていた。
だからこそ、仕方なく、本当に仕方なく。蒼は、助け舟を出すつもりで、言った。
「溝口のことは気にしなくていいですよ。こう見えてこいつ、情報屋だから」
此処で聞かなかったところで、此処で話した内容はどうせ、知られてしまうから、喋っても喋らなくても、おんなじ。
蒼の言葉に、劉堂は目を見開き、信じられないと言いたげに、溝口と蒼を見比べていた。
これが彼の素なのだろうかと、半ば面白いとさえ思いながら、蒼は彼の言葉を待った。
「どういうことー?」
やっと、自分のキャラを思い出したのかそう言った劉堂を見て、蒼は微笑んだ。
「どういうこともなにも、今言った通りです」
ね、みぞぐっちゃん。
蒼が同意を求めれば、苦虫を噛み潰した様な表情をしながらも、溝口は頷いてくれた。
それを見た劉堂が、嘘ではないと思ってくれたのを認めた蒼は、薄らと、笑った。
「どうしてー?」
「え、どうしてって、」
まあ、とりあえず、お茶でも飲んで気持ちを落ち着けたらいいと思うんですけど。
蒼は言って、劉堂の前に飲み物を差し出した。
「蒼たん」
「なあに、みぞぐっちゃん」
「僕ちゃんが情報屋ってことは言わないでおいてほしかったな〜〜〜〜〜〜〜〜な〜〜〜〜〜んて」
「どうせバレるんだから今でもいいと思いました」
「ごもっとも!!!」
でも切ない!でも別にどうでもいい!!!あとはもうご自由にどうぞ!!!!!!
溝口は最終的に、後は好きにしちゃってよね!と、言い置いて、自室へと戻ってしまった。
残ったのは、居心地が悪いと思っていた劉堂と、大して現状を気にしていない蒼だけだった。
「天城はね、仕方ないといえば、仕方ないんだ。だって、そういうふうに仕組まれてしまっていたんだから」
たとえ、誰もそれを、望んでいなかたっとしても。現実は、そうあることしか、許してくれなかった。
蒼の言葉を聞いて、劉堂はただ、目を見開くほか、なかった。
何を言われているのかまったく分からないと言いたげな劉堂の思いを察したのか、蒼は淡く、声も発てずに笑い、そうして、言った。
「天城くんがこの学園に来たのは、ただ、単に、夫妻が彼の面倒を、見きれなくなったから。ただ、それだけ」
微笑みながらそう言った蒼に対し、劉堂は、今にも泣きだしそうな、そんな、表情をしていた。
2018.03.10