Their story ≫ 第四幕
廊下にて遭遇
自分が何もしなくても、理事長が戻ってこれば、一気に全ては片付いてしまう。
そうだとしても、多少なりとも関わっている以上は、何かをしなくてはならない。
そんな事を考えてしまった蒼は、そう考えた自分が残念すぎると思いながら、目の前に居る劉堂を見詰めた。
息抜きをする為に部屋の外に出てきたのは、良くなかったかもしれない。
疲れた様子の劉堂が何を考えているのかは分からない。
どうして疲れているのか、その原因を予測することは出来ても、正解は、聞かなければ分からない。
「……………」
とはいえ、自分から進んで尋ねるのは気が引けた。
お互いに口を開かないため、その場は静寂に支配される。
居た堪れない。居心地が悪い。
親しい相手ではないからかもしれないが、それにしても、思わず謝りたくなってくる程居た堪れなかった。
謝らなかったけれど。
「おまえ、知ってただろ」
「………、そんな喋り方でしたっけ」
ほぼ、断定的に尋ねられた蒼は、素でそう返してしまった。
瞬間、劉堂が苛立った事を感じ取りはしても、言葉を取り消しはしなかった。
「天城は何の為に此処に入れられた」
「え」
「学力も何もかも足りてな「ああー…場所、変えましょう。誰かに聞かれたらあんまよろしくない内容なんで」………おまえ」
貴方がすっごくできる人ってことはよくよく分かったので、答えられる部分は答えますが、此処ではダメです。
蒼は劉堂の言葉を遮った後、彼の様子を窺った。
顔色が、あまり、良くない。
はっきり言えば、顔色が悪い。
(これは結構なところまで調べたな…)
天城の情報に関しては、隠されていない。
誰かが隠そうとしたところで、すぐに解除されてしまう。
だからきっと、調べる事が出来てしまったのだろう。
それでも、調べ終えた後、自分に聞きに来る辺り、劉堂は。
「手、冷たいですね」
誰かに見られたところで、大きな騒ぎにはならないはずだと、蒼は劉堂の手を取り、そう言った後、彼が嫌がっている場合については考えずに、その手を引いて廊下を歩き始めた。
2018.03.07