Their story ≫ 第四幕
寮部屋にて勉強
ほんとなーんで、蒼たんはZなんだろうねぇ。
溝口のその言葉に、蒼は苦笑した。
蒼の前にも、溝口の前にも、教科書と問題集とノートが開かれている。
蒼は難なく解き進めいたが、溝口は、止まっている。
「……さぁねえ」
溝口の問いかけに答えた蒼は、問題に目を通し、ノートに書き記していく。
「ていうか、みぞぐっちゃん今度こそちゃんと勉強しないとまずいんじゃないの。Cにはなれないって聞いてた気がするけど」
「あ」
蒼ってほんと記憶力いいよね僕その記憶力をもらって勉強に活かしたい主にテスト。
溝口に言われて、蒼は笑いながら、そんなにいいものでもないよと答えた。
(ほんと、いつも使ってる頭を勉強に持ってけばいいのに)
そう言ったところで、溝口が勉強をして順位を上げ、Aクラスに上がることはないと、蒼は知っている。
一年の時から、溝口は言っていた。
Bクラスが丁度良いのだと(彼の成績は少しでも彼自身が気を抜けばCクラスになってしまう)笑いながら言われた時のことを、思い出す。
「……がんばる。本気出す」
そのあとに続いた、リアルBLを見るために。という言葉は、聞かないことにして、蒼は問題集に目を通し始めた。
「天城くんは勉強してるのかなあ」
溝口が呟いた、その内容に、蒼は一瞬、本当に、他者が見たら気付くか気付かないか程度の一瞬、動きを止めた。
「さぁねぇ」
一瞬止めてしまった動きを、問題集の答えをノートに書くことで誤魔化しながら、蒼は笑った。
「してないと思うなあ」
でも、していなかったら本当の本当に、おしまいだと思うけど。何しろ、ホンモノの理事長が戻ってくるし。
蒼は言い、溝口は目を見開いた。
「なにそれ聞いてない!誰も知らない情報を蒼たんが知っているなんてこれは新たなフラグが!?」
「勉強しろ」
これ以上騒がないうちにと、蒼がそう言えば、溝口は素直に、立ちかけた体を椅子に戻し、至って静かに、一度閉じてしまっていた問題集を開いていた。
2018.03.05