Their story | ナノ


Their story ≫ 第四幕

寮部屋にて困惑

ずるい!ずるいよ蒼たん!!
部屋に入った瞬間そう言われた蒼は、溝口を見つめるしかなかった。
いったい何について言われているのか、まったく分からない。

「どうしてこう、萌えは僕の手をすり抜けていくんだ見たかった!滅茶苦茶見たかった!!!後から知ったんだけど!!!!!!それもクラスメイトから教えてもらったんだけどこれいかに!!!!?」

手を握られ、力説される。
本当になんなんだと思っていた蒼の耳に、届いたのはまさかの言葉だった。

「つづみんととばりんの絡み生で見たかったよ〜〜〜〜」
「………………………」

どうしよう。コイツ。本当に救いようがない。

蒼は思った挙句、握られている手を振りほどき、溝口を気にせずにキッチンへと向かった。
幸いなことに、料理当番制ははじめた頃のまま、続いている。
去年に比べ好き嫌いを克服したものの、未だに溝口の好き嫌いは残っている。

(…嫌いなものをふんだんに使ってやろう)

蒼は、見る人が見れば後ずさりそうな笑みを浮かべ、調理を始めた。
次々と自分が嫌いな食材が調理していくにも関わらず、非常に残念なことに、悶えている溝口がそれに気付くことはない。

「ていうか、それもう数日前のことなんだけど?」

調理の手を休め、蒼が言えば溝口は顔を上げ、目を見開いた。

「えっ」
「…………だから、数日前の話。神山クンが十夜に絡んでるってのは」

蒼は、一応、溝口の反応をうかがった。
見るまでもなく、彼がどんな反応をするかは分かっていたが、つい。

「ええっ」

どうして気付かなかったんだろう?

そう嘆いている溝口に、蒼は答えなかった。
答えがほしければ溝口は、騒ぐ。とりあえずなんで答えをくれないのだと、騒ぐので、そうなるまでは放っておいて問題はない。

「ねーえ、蒼たん、くっつきそう?つづみんととばっち、くっつきそう?」
「………無理だろ」

どう考えても。

蒼は言い、溝口は蹲る。

「ていうか、もうすぐテストだけど勉強大丈夫なの」
「ハッ!?え、嘘、マジで言ってんの、テスト?え?」
「嘘じゃないって。カレンダー確認しなよ」

出来上がった料理をテーブルに置きながら、蒼は言う。

「突然のテスト週間に俺氏困惑!!!!!!!!!!!」
「いや、分かってただろ最初から」

なんでテストのたびにこのやり取りをしなければならないのだろうかと考えながら、蒼は溝口にそう言い、苦笑した。

2013.07.04
2018.03.02


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