Their story ≫ 第四幕
第二図書館にて問答 其ノ二
質問に答えた後すぐに、蒼は尋ねる。
「ねえ、篠」
君が本当に聞きたいことって、そんなことじゃないよね。
断定的に尋ねた蒼に対し、篠は、苦笑を浮かべていた。
「答えられないことだったら無理だけど、そうじゃなければ、答えられるよ?」
視線を彷徨わせはしたものの、蒼の言葉に、諦めたように息を吐いた後。
「――――どうして、俺に招待状なんてもの、送りつけてきたんだ」
篠がそう言った。
何を考えて、篠に招待状を送ったのか。
それについて、明確な答えを、蒼は知らない。
答えを知っているのは、彼に招待状を送りつけた本人くらいだろう。
とはいえ、彼が何を考えて、篠にも招待状を送ったのかは、蒼にも分からない。
「それに関しては、知らないんだよね。どうして。って聞かれても。面白くなりそうだから。とか、そんな理由からじゃないかなあ?」
多分、そんなとこだろじゃないかなって、思う。
他人事のように言った蒼を見た篠は、予想外だと、言いたそうな表情を浮かべていた。
それを見た蒼は、笑う。
「確かに、頼まれて放送はしたけれど。招待状を作ったのも、君に送りつけたのも、僕ではないんだよ?」
「―――――藍田じゃ、なかったのか」
「そうなんです」
悪いね。篠の推測は、半分当たってて半分、外れ。ってとこじゃないかなあ。
蒼の言葉に、篠はそうか。と、小さく呟いた。
「じゃあ、誰?」
その言葉を聞いた蒼の表情を直視した篠は、動きだけではなく、言葉を止めた。
「それは、言えないんだなあ」
「――――――言えない、って」
「たとえば君が、偶然出会って知るならいいんだけど。僕からは言えないんだよ」
ごめんね?
少しも悪いと思っていない調子で蒼が言い、そんな蒼を見た篠は、脱力した。
「なんだそれ」
イラついているかのような声で言った篠を見て、少しばかり申し訳なく思った蒼は、言い訳をするかのように口を開いた。
「あー、うん。分かるよ。分かるんだけどね。特別棟の生徒は特に上には逆らえないんだよ。いろいろと特別だからさ。特別を押さえつけるための特別がいる」
「特別を押さえつけるための、特別?」
「そう。その辺については自分で調べてもらうしかないんだなあ」
たぶん、他の人に聞いても同じ答えが返ってくると思うよ。
蒼は言い、困った様に笑った。
2013.06.28
2018.02.28