Their story | ナノ


Their story ≫ 第四幕

第二図書館にて問答

考えを纏めていたのか、しばらくは静寂が続いた。
その間、蒼は閉じた参考書を再び開き、読み進める。

「何か、したのか?」

漸く口を開いた篠を、蒼は見た。

「何か、って?」
「アイツの、天城の周りから、人が減っている」

言葉が足りなかったことに気付いたのか、蒼の問いかけに対し、付け加えるように、篠が言った。

「―――――――ああ、だって、それは」

そういうルール、だから。

呆気ないほど簡単に蒼は答えた。

「ルール?」
「彼が来て暫くして、流した放送の内容、覚えてる?」
「放送?流した?って、あれ流したの…」
「―――僕。響山に言われてね」

投げやりに言った蒼に対して、篠はそうだったのかと頷いていた。

「多分覚えてないだろうから言うけど、あの歌って僕らにとってはルール説明みたいなものだったんだよね」
「………あれが?」

信じられない事を聞いたと、そう言いたげな篠を見て、蒼は苦笑した。

「そうだよ、ルール。転入生の周りの人たちから落としていきましょう。っていうルール説明だったんです」
「―――――――――うわぁ」

分かるわけがない。

篠のその言葉に、蒼は首を傾げ、尋ねた。

「でも、知ってただろ?」
「まあ、そりゃあ、ハイ」

そう答える篠の声は、心なしか、暗かったが、その理由について、蒼は深く考えなかった。

「天城には、手を出さないのか?」
「………そう来たか」
「答えられない質問だったか?」
「そんなことないよ」

篠の視線を受けた蒼は、一息置いた後、口を開く。

「手を出すっていうのが身体的な事に対してだったら、誰も手は出さないし、精神的な事に対してだったら、誰もが手を出す、ってとこかな」

その答えを聞いて、篠の表情が特に動くことはなかったのを見た蒼は、微笑んだ。

2013.06.28
2018.02.27


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