Their story ≫ 第四幕
第二図書館にて勉強
響山と別れた蒼は、第二図書館に訪れていた。
誰も気にはしていないが、そろそろ期末試験に向けて勉強を始めなければならない時期だ。
(何からやろうかな…)
今回の試験結果、ほかの人たちはどれくらいの順位を目指すのだろうか。
自分は、どうしようか。
そんなことを考えながら、参考書のコーナーを、蒼は歩く。
「あ…」
目にとまった数学の参考書を手に取ろうとした瞬間、声が聞こえた。
その方向を見た蒼は、其処に篠の姿を見止め、微笑んだ。
「どうも。オヒサシブリ」
どうやら天城から逃げてきたわけではなさそうだったものの、何故篠が今この時間に、ここにいるのだろうか。
思わず腕時計で時間を確認した後、壁に掛けられた時計を見れば、時刻は合っている。
授業中である時間に、彼がこの場所にいるのは何故だろうか。
考えてみたところで、蒼には分からなかった。
「久しぶり」
返ってきた声に微笑みを返した蒼は、目にとめた参考書を手に取り、それ以外にも適当に数冊、参考書を手にした後、身近な席へと腰を下ろした。
感じる視線はそのままに、ページを捲る。
何か聞きたいことがあるのなら、彼のことだからきっと、口を開くことだろう。
「―――――藍田」
「はあい?」
呼ばれた蒼は、返事をしながら顔を上げ、何処か楽しげなイロを含んだ篠の瞳を見つめた。
聞きたいことがあるんだけど。
そう、篠に言われ、蒼は笑った。
「答えられることだったら、答えるよ」
そうでなければ答えないと言外に告げ、蒼は篠を見た。
「答えられないこともあるんだ」
「そりゃあね。いろいろと」
篠の言葉に蒼は頷き、
「答えられないことを聞かれても、答えられないけれど、答えられることなら答えましょう」
参考書を閉じながら、繰り返した。
2013.06.28
2018.02.26