Their story | ナノ


Their story ≫ 第四幕

保健室にて密会

仮名崎を特別棟の保健室に届けた後、蒼は一般棟の保健室に訪れていた。
何故かと言えば、保健室に着く直前で気付いた仮名崎に、保健室の主が用事があるって言ってたと告げられたからだった。

「仮名崎を使って呼び出すの、やめてほしいです」

保健室に入り、早渡の姿を認めた瞬間、蒼はそう言った。
表には外出中の札が下げられている。
それはつまり、一般棟の生徒が来る可能性がゼロに近く、保険室内には誰一人として、いないことを指す。
保健室に来るまでの道のりで、数えきれる程の生徒と教師とはすれ違っていた為に、普通の生徒は今、授業中のはずなのに一体何をしているのだろうかと自分の事は棚に上げ、そんなことを考えながら、蒼は面白いほど歪められた早渡の顔を見た。

「その顔はいったいなんですかー」
「……心臓に悪いとか言うのか?」
「言わないです。でも仮名崎じゃなくても良かったと思いますー」

呼び出したのは聞きたいことがあったからだ。
その言葉を聞かなかったことにしたのか、早々に本題に入った様子の早渡に備え付けのベッドに座るように視線で促され、腰を下ろした蒼は、息を吐いた。

「何を聞きたいんですか?」
「あいつらはどうなってるんだ」
「さあ?」

おまえなあ。
そう言われたところで、蒼の答えは変わらない。
早渡が言うところの『あいつら』が誰を指しているのか、分かってはいるものの、どうなっているのかと聞かれたところで、相手にしている者のことしか、分からないのが現状だ。
そんなこと、早渡は把握しているだろう。
だからきっと、本当に聞きたいことは別にある。
そんな風に考えながら、蒼は笑った。

「―――――篠くんはのらりくらりと頑張ってるみたいですよ」

早渡が一番気にしているのは彼のことだろうと思った蒼がそう言えば、苦虫を噛み潰したような微妙な表情を返された。
これだから苦手なんだという言葉まで聞こえてきそうだと思いながら、その表情を見つめた蒼の髪は、いつのまにか伸びてきていた早渡の手によってかきまぜられていた。

「いきなり何するんですか」
「なんとなく」
「ああ、そう、ですか…」

意味わかんない。離してください。
困惑気味の蒼に先程とは異なる笑みを浮かべた早渡は、気をつけろよ。と、呟いた。
そう言われたところで、蒼は笑うしかない。

「――――――――できる限り」
「そこは、素直に頷いておけよ」
「嘘がつけないもので」

早渡が何かを読み取ろうとするかのように目を細めたのを見ても、やはり、笑うしかなかった。

「そんなに心配しなくても、なるようにしかならないし、おさまるべきところに全部、おさまることになる、と、思います」

あ。でもでも、今の状況、紅さんには絶対。連絡しないで。

その時蒼が浮かべていた表情を見てか、早渡は表情を崩す。
お前はこんな時ばかりと言われた蒼は、首を傾げた。

2013.06.13
2018.02.16


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