Their story | ナノ


Their story ≫ 第四幕

寮部屋にて茶番

溝口を引き摺りながら部屋へと戻り、室内に入った蒼は、深く息を吐いた。
最近、一日に出会う人の数が極端に多い気がする。去年は別の意味で多かったが、今年は自分から進んでいろんな場所に行っているからかもしれない。
そんなことを考えていれば、思わず、呟いてしまっていたらしい。

「こんなはずじゃあなかったんだけどなあ」
「なにが?」

小さく、吐き出してみたところで現実は何も変わりはしない。あんな約束など、しなければ良かった。
今更、思ってみたところで遅すぎると、蒼は嗤っていた。

「あーおたんっ」

アレはどうして、あのまま育ってしまったのか。

天城夫妻は一体何を考えているんのだろうか。
そんなことを考えてみたところで、アレ等は彼を引き取っただけであり、実質、関わっていないに等しいという事実を思い出した蒼は、だからなのかもしれない、何度目になるか分からない溜息を、吐き出した。

「あっおったーん!!!」
「うっせ」

考え事をしながらもリビングに移動し、ソファーに腰掛けた蒼は、だから。と、言うわけではないが、大きな音を発ててリビングの扉が開かれ、それに負けず劣らず、大きな声で自分のことを呼んだ溝口に対し、そう言い放った。

「…………最近ほんと冷たくない?」
「気の所為」
「気の所為が気の所為!」
「気の所為が気の所為で気の所為」
「気の所為が気の所為で気の所為の気の所為?!」
「……………みぞぐっちゃんってばかだったの?」

なんだこのくだらないやり取り。
そう思いながら蒼が言えば、溝口はその場で打ちひしがれていた。

「―――――――ごめんね?」

なんとなく、謝ってしまったのは溝口があまりにも可哀相に映ってしまったからだと、釈然としない思いを抱えながらも蒼は自分自身にそう言い聞かせた。

2013.06.08
2018.02.09


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