Their story | ナノ


Their story ≫ 第四幕

道中にて説得

「………君が行っても、あそこにいる人たちには…相手にしてもらえないと思う」

そんなことはないとか、そういう内容を返してくるだろうと思いながらも、蒼は言った。

「何言ってんだよ!!そんなこと、あるわけねーだろ?!」

嗚呼、言い方が悪かったかもしれない。でも今以上に伝わりやすい言葉なんて、あるのだろうか。
そう思いながら、蒼は彼の言葉の続きを待った。
とはいえ、同じことを言葉を変えて言う天城を見て、早々に飽きてしまった。
何故か鼓浦に手を握られてはいるが、だからといって現状をどうにかしなけばならないという事実は変わらない。
これくらいならまあいいか。と、そんなことを考えながら、蒼は再び口を開いた。

「いやあ、それがあるんだなあ」

第一、危険だから、別の場所で授業受けてるんだよ、僕等って。一般棟の生徒となあんの問題もなく話が出来るのって、極々少数しかいないよ?

蒼は言い、続ける。

「ちなみに鼓浦はギリギリセーフ、ってとこかなあ」

呟くように、続けた言葉に、天城が叫ぶ。

「な、そ、そんなのおかしい!!!」

叫んだ天城に、蒼は目を細めて笑った。
手を握られる力が微かに増した気がした為に、仕方ないなあとばかりに、握り返しながら。
いったいどういう状況だと思わなくはないものの、我を失われるよりは遥にマシだと結論付けて、蒼は告げた。

「別に何も、おかしくないよ。パンフレット、ちゃんと読んでれば知ってることのはず、なんだけどなあ?」
「………っ、そん、」
「そんなもなにもね、君、学園‐ココ‐について、知らない事ばかりじゃないの?規則も知らないだろうし、親衛隊の事についても知らないだろうし、何のために生徒会と風紀委員会があるかも分かってないだろうし」

呆然としていながらも、何かを言おうにも口を開閉させている天城を見ながら、蒼は言った。

「少しは自分から、知る努力をしてみたらいいんじゃないかな。生徒会役員や親衛隊持ちの言ってることばかり信じてたら、君は近い将来、一人ぼっちになっちゃうよ?それでもいいなら、別にそのままでいればいいと思うけど。」
「そんなことない!!!」
「――――――ふぅん?」

即座にそう叫んだ天城を見つめ、蒼は嗤いながら言う。

「じゃあ、今どうして君は、一人なの?」

その言葉には、まったくと言っていいほど、温度はなかった。

2013.06.04
2018.02.04


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