Their story | ナノ


Their story ≫ 第四幕

道中にて逢瀬

神山と鼓浦があの後どうなったのか(少なくとも、午後の授業を受けるために教室にいた鼓浦は疲れ果てていた)詳細は分からないものの、いつも通り授業を受け終えた蒼は、久しぶりに部活動に出ようと思い、美術室へ向かい歩いていた。
目的地に向かいながらもフラフラと歩いていれば、背後に気配を感じた。

「あ……」

次いで、驚いたような声が聴こえ、振り向いた蒼は、そうした瞬間、目を細めた。

「………ふ」

常とは異なる三草の姿に、蒼は知らず、吐息を漏らし、笑みを浮かべた。
だからといって、何かを言うわけでもない。
本来、転入生の傍にいるはずの三草がこの場所にいる事は、ある意味、異常だと言える。
少なくとも未だ、転入生の傍を離れる様にと七草に命令されていないはずにも関わらず、此処にいると言う事はつまり、耐えきれずに逃げ出したところだろう。
そう考えながら笑みを堪えていれば、不愉快そうに眉を寄せた三草が口を開いた。

「なにを笑って…」
「―――――きぃちゃんの言いつけ、破って大丈夫なの?」
「………ッ」

目を細めて笑った蒼がどのように映ったのか、そのまま動きを止めてしまった三草を見た蒼は、殊更おかしく思えてきたために、笑みを深め、口を開いた。

「大切な人の手はちゃんと握っておかないと。逃げられちゃうよ?」
「なんで」
「アドバイスアドバイス!きぃちゃんのことほんとに好きなら支配されたいのなら言う事は聞いておかないと。そんでもって縛り付けておかないと」

そうしてくれないと、こっちも困るし。

心内で付け加えたことこそ告げなかったものの、また余計な事を言ってしまったかもしれない。
そんなことを思いながらその場から立ち去ろうとした蒼は、いつの間にか傍に来ていた三草に腕を掴まれていたために、動きを止めた。

「―――――何のつもり?」
「紀伊との、関係は?」
「前も言ったっしょ」

同じことを何回も言うのは、ナンセンスだ。
そう思いながら、蒼は嗤った。
嗤いながら言い放つ。

「ただの、クラスメイト」

自分と彼の関係は、その一言に集約される。
それ以上でも、それ以下でもない。
そう言いながら、蒼は自分の腕を取っている三草の手に、自分の手を添えた。

2013.03.01
2018.01.25


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