Their story ≫ 第四幕
廊下にて嘆息 其ノ二
暫くして気が済んだのか開放された蒼は、自分たちがいた場所が教室の前付近だったことに気付き、眉を寄せた。
とはいえ、誰かに見られたところで問題になるわけでもない。
「で。何がもったいない、なの?」
気を取り直した蒼は、七草に尋ねた。
「んー、」
一瞬、言い淀んだ七草は、曖昧に微笑んで小さな声で言った。
「蒼ちゃんが十夜のものになっちゃうのが、かなぁ」
「………」
言っとくけどぼく、ものじゃないからね?
七草にそう返し、蒼は苦笑する。
「知ってるよぉ」
「それならいいけど」
ていうかそうなるとしても、そうなるまえに神山君が十夜のこと手に入れちゃいそうな感じがしたよ、僕は。
「………そうだねぇ」
蒼のその言葉に、七草はそれもそうかもしれないという表情を浮かべて、頷いていた。
きっとまだ、屋上で、神山と鼓浦は言い争っているに違いない。
或いは、鼓浦が神山を沈めている頃かもしれない。
その逆はおそらく、ないだろうと蒼は思う。
「そろそろかなぁ」
蒼はなにがそろそろなのかを尋ねようとしたものの、外から爆音が聞こえてきた為に、そうすることは叶わなかった。
2013.02.27
2018.01.21