Their story | ナノ


Their story ≫ 第四幕

屋上にて困惑

神山幎とは、こんな人物だっただろうか。蒼は思う。
鼓浦へ迫っていく神山を見ていれば、七草が呟いた。
どうも人格崩壊起こしちゃったみたいなんだよねぇ。と。

(ほんと、何しちゃったの十夜…)

呆れ半分、恐れとはまた異なる別の感慨をもう半分に抱きながら、特別棟まで来れてしまった神山を見た。
特別棟の校舎に入り屋上まで来れた情熱があれば人格崩壊しようが生きていける気がしてしまう。

「――――――僕のコト巻き込むなよ?鼓浦クン」

背後からのしかかられそうな雰囲気を感じ、常より低い声で呟いてみたものの、結局蒼の思いとは裏腹に、鼓浦に後ろから抱きしめられた蒼は、どうしてくれるんだと思いながらも、事の成り行きを見守る他なかった。
こうなったら無我だ。
そんなことを考えながら、傍観に徹することに決めた。
そう決めたからと言ってそれがほぼ不可能なコトであることも解りながら。

「お前、なんなんだよ鼓浦の」
「おともだち」
「友達?」
「おほもだちじゃないよ。おともだちね、お友達」

其れにしては距離が近すぎねぇか?

神山が鼓浦に抱いている感情が何なのかを知らない蒼は、その言葉を聞きながらも重い。と小さな声で呟き、どうにかして鼓浦の腕の中から抜け出そうと試みていた。
未だかつて成功したためしがないそれが、今回も成功しないことは分かりきっていたものの、それでも試さずにはいられなかった。
神山からの刺すような不躾な視線が怖いような気がする。
不良ってこんなに怖いものだったんだ。
若干失礼な事を考えながら、答えるように先を促し続けている神山に向かい、彼の方を見ずに言う。

「この場所じゃ普通じゃないの?別に付き合ってるわけじゃないんだから安心していいよ」

そう言い、完全に場の雰囲気を楽しんでいる様子の七草に視線を向けた。
その表情を見る限り、どうやら助けてくれる気はないらしい。
もとより望んでいなかったものの、少しどころかかなり恨めしいと考えながら、どうしたもんか。と、蒼は考えを巡らせた。

2013.02.21
2018.01.11


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