Their story | ナノ


Their story ≫ 第四幕

屋上にて傷心

緊迫感漂う教室の中に居座り続ける事も出来ないと思った蒼は、状況を聞きだす前に移動をする方が先だと思い、七草と鼓浦を引き連れて教室を後にした。
あからさまに安堵した雰囲気が教室から漂ってきていたのは、恐らく、気のせいではない。
離れた場所に行くのも面倒だったため、そのまま階段を上がって屋上へと出る。
珍しい事に屋上には人一人、いなかった。
屋上にいつの間にか設置されていた椅子に座った蒼は、一番隅に座ったにも関わらず、鼓浦に押しのけられ両側を彼と七草に座られる形になってしまった為に少しばかり居心地が悪いと思いながら、それでも口を開いた。

「―――――ていうか、自分でも驚いてるんだよね」

きぃちゃんの傍でまさかこれほど安眠できるとは。
そう蒼が呟くと、其れを聞いた七草がよっぽど疲れてたんだねぇ。と、笑いながら言う。鼓浦だけが不機嫌そうにその様子を見ていたものの、蒼の今度甘い物作ったげる。という発言に、身に纏う空気を和らげた。

「蒼ちゃん最近眠れてないのぉ?」
「………うーん。そういうわけでも、ない。と、思ってたんだけど」

そうなのかも。
珍しくも困った様に笑いながら、蒼が言えば七草も鼓浦も驚いている様だった。

「重症だな」
「十夜クン…」

別に重症でもなんでもないんだけど。
呆れたように蒼は言った。

「幕引きは、いつがいいんだろうね」

小さく小さく呟いた。
それは単に、話題を変える為だけに呟かれたものではないように感じられた七草と鼓浦は、互いに顔を見合わせた後、再度蒼を見た。

「別に何時でもいいんじゃねーの」
「そうだねぇ。粗方もう、遊べる程残ってるわけでもないだろうしぃ」

その瞬間、何か嫌なことを思い出したのか鼓浦が不機嫌そうに唸った。

「あ。そうじゃん。彼、どうなってんの」
「うっせ。黙れ」
「あはは、だめだよぉ蒼ちゃんその事に触れたりしたらぁ」

そう言って七草が笑った瞬間、屋上の扉が乱雑に開かれ、鼓浦十夜!勝負しろ!!と、言う神山幎の大きな声がその場に響き渡った。

2013.02.19
2018.01.10


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