Their story ≫ 第四幕
教室にて抱擁
最近、大人しいみたいだねぇ、彼。
七草の言葉に、蒼はぼんやりと顔を彼の方へ向けた。
始業開始まで大分時間があるからか、教室には蒼と七草しかいない。
「―――――彼?」
呟いてから誰の事を指しているのか分かった蒼は、ああ。と、小さく呟いた。
「何かしたのぉ?」
「特には」
「ふぅん」
何処か納得してない様子の七草を見て、蒼は笑う。
「何か気になる事でも、あった?」
蒼が尋ねれば、七草は笑った。
「あえて言うなら、蒼ちゃんがどうしてそんなに眠そうなのかが気になるなぁ」
言われた蒼は、ただ単に睡眠不足。と、答え、何を思ったのか席を立ちあがり、ふらふらと七草の方へ行き、抱き着いた。
「あ、蒼ちゃん!?」
「んー、ちょっとここ、かり、」
最後まで言えないうちに、焦っている七草をそのままに、蒼の意識は沈んだ。
正面から抱き着かれた七草が、こういうことされると勘違いしちゃうんだけどなぁ。と、呟いていた事も、あとから教室に現れた鼓浦が七草に殴りかかろうとしたのをクラスメイトが止めることになることなど、眠ってしまった蒼が知るわけがなかった。
2013.02.13
2018.01.08