Their story ≫ 第三幕
集合場所にて悪戯
気分が悪い。確実に何か嫌なフラグを立ててしまった。
そんな事を考えながら、蒼は集合場所へ辿り着いた。
ぐるぐると考えているうちに、同室者に話しかけるのが一番だろうという考えに行きついた蒼は、溝口の姿を探し始め、程なくして目的の人を見つけると、人と人の合間をぬって進む。
「みーぞぐっちゃん!」
「ぅぐっ!?」
蒼は彼の名を呼びながら、その背中に飛びついた。
突然飛びつかれた溝口は、呻き声をあげた。
勢いは一応殺したつもりではあったが、彼にとっては強い力だったのだろうかと若干申し訳なく思いながら様子を窺えば、どうやら、大丈夫な様だった。
「蒼たん……いきなりそれはないっしょ」
「そ?」
「そだよ…」
時々、信じられないことするよな。
そう言った溝口に、蒼は笑った。
「ところでさー、今日は何するの」
「さー?」
あ、でも。今日の企画、本当なら会長が考えるべきモノだったらしいけど、昨日と同じで多分双子が企画したものだと思うんだよね。
小さな声でそう答えた溝口に、ふぅん。と、蒼は返した。
「まだ彼が来てから数週間しか経ってないのに、荒れてるよねー」
ぼんやりと、蒼は言う。
溝口は蒼の言葉に頷いた。
「忙しい時期に来たから尚更、大変だったろうね」
「――――書記様のコト?」
「そうそ」
それ以外に誰がいるんだい。
溝口の言葉に、蒼は苦笑する。
「いない、かな…」
そうして答えた後、溝口の反応を伺った。
「蒼たん。書記様はどっちが攻めでどっちが受けだと思う?!俺的にはどっちがどっちでもいいんだけど、ていうかリバップルだと良いよね!!互いが互いを思いあい、互いの世界に互いが存在することしか許さない、其処に誰が入ってきたところですべて排除してしまう。二人だけの世界、二人だけの「みぞぐっちゃん」うあはいいいいっ!?」
溝口の言葉に、蒼は心底彼を見下している様子で嗤った。
「誰も聞いてないとは思うけど、少しは自重すべきだと思うよ?そういう発言は」
「…………………………………ごめんなさい」
蒼の視線は溝口の大切なモノがある場所に注がれていた。その為、溝口は否応にも謝らざるを得なかったのだが、そんなことを蒼が気にするはずもない。
「後、あの二人は転入生を嫌ってるだけであって、」
互いが互いだけにしか気を許さないわけじゃあ、ないよ。現に普通に仲良い人たち、いるじゃん。
そう言った蒼は、呆気にとられた様子の溝口から、別の場所へと視線を移した。
2012.10.03
2017.10.21