Their story | ナノ


Their story ≫ 2

安堵(side:A)

どうにも、調子が狂う。

此処最近、秋野はずっとそんな風に思っている。
都と接する時にだけ、自分自身の言動がままならない。
泣き顔も笑顔も、自分にだけ見せてくれればいいと、いつの間にか。少しでも、そんなことを考えるようになっていた自分に驚きながらも、秋野はそれを受け入れていた。

「もう寝ろ」

都の話は、ひと段落したのだろう。
話し始める前より、様子が落ち着いていることに気付いていた秋野は、そう言った。

「え…」
「熱、あるだろ」

そう言えば、都は首を傾げ、秋野を見上げてくる。
その仕草がかわいすぎたために、思わず頭を抱えそうになった秋野は、その衝動を堪え、溜息と共に此処最近リビングに常備されるようになった救急箱から体温計を取り出し、都に手渡した。
渋々という様子でそれを受け取った都は、素直に熱を測り、表示された数字をみておそらく、無意識のうちに唸り声をあげていた。

「………お前、」
「や、でもほんと、別にそこまで…ちょ、滋く…」
「寝ろ」

リビングから都個人の部屋までそれほど距離がないものの、秋野は都を横抱きにし、彼の部屋へ向かうとベッドの上へ下ろした。

「休むために行かなかったんじゃねぇのかよ」

都をベッドに下ろした瞬間、偶然にもパソコンの待機画面が見えてしまったために秋野が言えば、都は困った様子で眉尻を下げて、寝てるだけって結構つまらなくて。と、呟いた。
それを聞いた秋野は、呆れたように表情を崩し、口を開く。

「それで熱が上がってたら世話ねェだろ」
「………そう、だよね」

まるで自分に言い聞かせるかのように小さな声で呟かれた言葉は聞こえなかったふりをし、都の髪に触れ、ちゃんと休めよ。と告げた秋野は、その瞬間の都の表情を直視できなかった。

2013.05.02
2017.04.09


copyright (c) 20100210~ km
all rights reserved.
×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -