Their story ≫ 2
安堵(side:E)
林間学校は、良くも悪くも、無事にすべての工程を終了したらしい。
知り合いにより、その情報をもたらされた都は、安堵する。
今年も参加することは終に叶わなかったが、噂を聞く限り、参加できなくて良かったのだろう。
この学園に来た以上、一度は、参加してみたいものだと、都は思っているが、今年だけは行けなくて良かったと思っている。
そんなことよりも、今、気にするべきことはほかにあった。
林間学校の最中でも、都は秋野に不本意ながら、お世話になってしまっていた。
もしかして、怒らせてしまっただろうか。
そんなことを考えてみたものの、結局、都は考えをまとめることが出来なかった。
ひどく、ぼんやりしている。
だからきっと、また発熱しているのだろう。
すぐに具合が悪くなるこの体をどうにかしたいと思ってみたところで、幼い頃から続いている事でもある為、良い意味でも悪い意味でもどうにもならないことなのだと、諦めてしまっている。
「―――、?」
視界がぼやけたことによって、何かがおかしいと思った都は、目元を拭い、そこで漸く自分が涙を流していることに、気が付いた。
「なんで…」
どうして、だろうか。
考えてみたところで、理由は分からない。
そのまま、ぼんやりとしていれば不意に、人の気配を感じた。都?と、呟かれた声に振り向けば、どこか驚いている様子の秋野の姿があった。
「………お前、」
「あ。あーっと、えと、これ、は…」
「――ンで、泣いてンだよ」
それが、自分でもわからない。
答えた都の目元は、秋野の服の裾によって、いささか乱暴に拭われていた。
「――――痛い」
「あ。わりィ」
思わず呟いた都に、秋野はハッとしたように動きを止めた。
「………ありがと」
「別に」
「怒って、ない?」
「………は?」
思わず口をついて出ていた言葉に、しまったと思ってみたものの、口に出してしまった言葉をなかったことにはできない。
都はどうしようかと思いながら、眉を寄せた秋野を見上げ、何を?と、続けた彼に向かい、迷惑、かけまくってるから。と、告げた。
「――――――怒ってなんて、ねェよ」
第一、怒ってたら戻ってこねェし。
何処に。とは、言わなかったものの、秋野が言いたいことが分かった都は、良かった。と、自分でも気づかないままに、笑みを浮かべていた。
2013.04.19
2017.04,07