Their story | ナノ


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過去(side.A)

寮部屋に戻った秋野は、近頃本当に自分で自分の行動が理解出来ないと考える。
無意識のうちに同室者のことを気にしていることが原因であるとは、分かっていた。
何かを思い出しそうになるが、結局思い出せない当たり、気のせいなのかもしれない。
今まで自発的に誰かを気に掛けることなど、なかったはずだ。

「………寝てる、か」

この時間なら当然だ。

リビングの壁に掛かっている時計で時間を確認し、小さく呟く。
時々、都は深夜に何をするでもなく、ぼんやりとリビングで過ごしていることがある。
発熱していてもしていなくても関係なく、気が向いた時にそうして過ごしている事に、同室で過ごしているうちに気付いてしまった。
昨年も、そうだったのだろうか。
無意識に考えていたことにようやく気付いた秋野は眉を寄せ、本当にわけがわからないと思う。

「………チッ」

舌打ちをしながらも、都を気に掛けることに関しては、不快に思ってはいない現状を不思議に思いながら冷蔵庫を開けた秋野は、今度は眉を顰めた。

(……水しかねぇ)

食欲がないという理由で、都は何も食べていないことだろう。
いつもだったら何かしら入っている冷蔵庫内と、シンクを見てそう思う。

(粥くらいなら作れんだろ…)

なんでこんな事をしているのだろうかと思いながらも、それほど時間を使わずに作った粥の入った鍋を、相手にとっては余計なお世話かもしれないと思いながら、テーブルに置く。

(………)

自分で自分の事を気持ち悪く思ったところで、都が起きた時に水だけ飲んで済ませてしまう可能性を考えて心配になってしまう自分の気持ちを偽ることは出来ない。

「……ァー…」

本当に、らしくない。

少し考えた後、結局秋野は鍋の傍にいつものように、メモを残した。

2011.12.20
2017.03.22
都が起きる、少し前の話


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