Their story | ナノ


Their story ≫ 第三幕

林間学校にて遭遇

今更新入生歓迎会を兼ねた林間学校等必要ない気がする。

蒼はそんなことを考えながら、一般棟の生徒に紛れ込む。

(B、いや、D?何組だったっけ)

去年よりざわつき、若干神経質とも受け取れる空気を感じながら、蒼は考えを巡らせる。
行事が始まる前に一般等のクラスに紛れ込めるような工面は済ませてある。
まさかそれが、一草の受け持つクラスであるとまでは思っていなかった蒼は、そうと知った七草が一草の息の根を止めに行こうとする事を止めていた。

「藍田」

呼ばれ、振り返れば其処には一草の姿がある。
今この場で話をする必要はないはずだと考えながらも、呼ばれてしまった為に口を開いた。

「どうしたんですか?一草先生」
「何してんだ、おまえ」
「あれ、連絡いっていませんか?病弱でクラスの授業には出れてないものの珍しく医師の許可が出たために参加できることになった。という設定で貴方のクラスの生徒になってるんですけど」

あくまで、一草にのみ聞こえるように、にこやかにそう告げた蒼に返されたのは深い溜息だった。
連絡がいっていてもいっていなくても、関係ない。

「………お前」
「はい」
「後で面かせ」
「え。いやです」
「即答かよ…」
「一草先生、平凡になってから出直してきてください。僕、親衛隊の餌食になるのは嫌なんですよ」

では今この状況は。
そう問いかけようとしたのか、口を開いた一草は周りの状況を察したのか、息を吐き出すだけに留めたようだった。
現在、周囲の視線は一点に向かっている。
恐らく今この瞬間、一草と蒼が話していたところで、気にする生徒はほぼ、いないだろう。
いたところで意識は向こうに持っていかれるはずだ。
夕と夜が、天城に抱き着いている為に、悲鳴すら聞こえてきている。

「………夜にでも会いに来い」

そう言いながらズボンのポケットに入れられた紙には、恐らく一草に割り当てられた部屋番号が記されているのだろう。来い。と、言われた以上は行かなくてはならないのかもしれないが、蒼は曖昧に笑う。

「時間があれば伺いますね」

そうでなくても、面倒なのだからという言葉は飲み込み、蒼は一草の傍を離れた。

2012.09.03
re 2015.11.22


copyright (c) 20100210~ km
all rights reserved.
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -