Their story ≫ 2
困惑 (side.A)
電話の後、どうにも気が立ってしまい落ち着かなくなった秋野は、学外の溜まり場を訪れていた。
秋野が一連の話を息抜きをしにきていた葉加瀬にした後すぐに、苦笑される。
「お前、それは…」
あー、いや。うん。でも、なぁ。
煮え切れない言葉を呟いている葉加瀬を見やり、秋野はすぐに視線を手元に戻した。
手元にあるグラスに入ったウイスキーを一気に飲み干し、しばらく経ってから再び葉加瀬を見れば、葉加瀬は苦笑を浮かべていた。
「―――ンだよ」
「うーん」
「おい」
「な、んでもなーいよっと」
何事かを考えていたはずの葉加瀬は結局それしか言わず、秋野は釈然としない思いを抱きながらも彼を睨むだけにとどめた。
「あー、でも、」
その電話の相手ならそーちょーの同室者の前の同室者。
「はァ?」
「ん?」
「アイツが?」
「そそ」
ただでさえ顰めていた表情を、秋野は更に歪めた。
「………………」
「うわぁ」
そんな秋野の表情を見たからか、はたまた別の理由からか。
葉加瀬はこれ以上傍にいるのはまずいと思ったのか、秋野の隣の席を立つ。
「おい、ハル」
「はいはい。何かな、アキ」
とはいえ、総長であり悪友である秋野に何か言われれば立ち止まるらしく、葉加瀬は秋野の声に即座に反応する。
「確かなのか、それ」
秋野はそう尋ね、葉加瀬の答えを待つ。
「そうだよー」
そーちょーの幼馴染は、今のそーちょーの同室者の前の同室者だったんだよ。
確認の意味か、同じ言葉を繰り返しながらそう言った葉加瀬に、葉加瀬が悪いわけではないと知りながらも、秋野は苛立ちから、気付けば舌打ちしていた。
「おーい?」
「…からってなんでアイツにあんなこと言われなきゃなんねェんだよ」
「…………本人のみぞ知る?かなー?」
軽い調子で返した葉加瀬に溜息を返し、秋野は席を立った。
「まァ、アイツが考えることなんざ俺に分かるはずがねェしな…」
呟いた声は、秋野自身にしか聞こえなかった。
2011.11.25
修正 2015.01.10