Their story ≫ 2
困惑 (side.E)
秋野が部屋から出て行った後、これ幸いと布団の中にもぐりこんだ都は、熱を持っている頬を両手で抑え込んだ。
(な…にこれ、なにこれなんだこれ)
さっきまではなんともなかったのに。
そう思いながら頬をおさえこんではみるものの、なかなか熱は引かない。
「…………なに、これ」
声に出してみたところで、言葉が持つ意味は変わらない。
体調不良とは違った様子で、それでもうるさくなる心臓をどうにかして落ち着けようとしてみたものの、そうしようとした瞬間先程秋野に抱き上げられたことを思い出し、落ち着き始めた心臓の動きはまた元に戻る。
「っ、」
それにしても、何故秋野は何かを考え込むような、難しいことを考えているかのような表情をしていたのだろうか。
都はそんなことを考えてみたものの、秋野が何を考えているかなど分かるはずがなかった。
(あたたかかったな)
まさか、あんなふうにしてくれるとは思ってもみなかった。
他者との触れ合いを好んではいないものの、自分でも不思議なことに、秋野に触れられることは嫌ではなかったことを思い出し、都は困惑する。
(どうして、)
先程からおさまらない動悸の理由も、頬が熱い理由も都には分からなかった。
「ねよう、」
ねよう。
もう一度そう呟き、都は瞼をおろした。
睡魔に身を委ねる直前、部屋の扉が開き、閉じる音を聞いたような気がした。
2011.11.16
修正 2015.01.10