Their story ≫ 2
安堵 (side.A)
秋野は様子の落ち着いた都を抱き上げ(多少の抵抗があったが無視することにした)、一応許可を取り都の部屋に入ると壊れ物を扱うかのように、都をベッドの上に下ろした。
「……………あ、りがとう?」
都が困惑するのも当然だと、秋野は思う。
秋野自身が自分のこの行動困惑していた。
「難しい顔してる…」
独り言なのか、思っていた事だったのか、都の口から零れ落ちた言葉に、秋野は目を見開き、自分でも驚いている様子の都を見た。
見ただけで、言葉は出てこない。
暫くして、秋野が口を開こうとした瞬間、けたたましい着信音がその場に鳴り響いた。
「わりぃ」
「ぇっ、あ、別に」
自分の部屋にも関わらず所在なさそうに視線を彷徨わせていた都は、勢いよく秋野の方を見、そう言ったが勢い良すぎた所為で眩暈でも起きたのか、眉を寄せ、何かに耐えるような表情をしていた。
「――――――――、ちゃんと、寝ろよ。邪魔した」
「うん」
都の部屋を後にした秋野は、未だけたたましく鳴り響いている携帯電話を苛立ち交じりに開き、ディスプレイを見て小さく舌打ちをすると通話ボタンを押した。
「なんだ」
『わぁ不機嫌?』
「………………用件は?」
滅多にかけてこない相手からかかってきたのは何故だろうか。
そんなことを考えながらも、あまり好きでもない相手ではなかった為に、気を使う必要はいつも以上にないだろうと、秋野の態度は不機嫌なままだった。
『遠藤に手、だすなよ』
「はァ?」
『だから、同室者に手を出すなっつってんの』
「………」
『そんだけ』
「………ア゛ァ?」
思わず低い声が出ていたからか、多分、それがなくとも通話は切られていたと思うが。
とにかく、唐突に通話は切られ、後には間抜けな音だけが残った。
「意味、わかんねェ」
携帯電話を見つめ、何故コイツが都の事を知っている上に釘をさしてきたのだろうかと考えてみたものの、結局自分が都に手を出すことなど有り得ないことだと思った秋野は、思考を打ち切った。
2011.11.09
修正 2015.01.10